米国が対中国製品への関税を引き上げ、それに中国が報復措置を発表したことで、週明け13日は世界中で株価が下落、ブラジルのサンパウロ株式市場指数(Ibovespa)も、2・69%ダウンの9万1726・54ポイントで取引を終えたと、14日付ブラジル各紙が報じた。
また、この日の為替相場も、一時、1ドル=4レアルのラインを突破した後、前日比0・87%のドル高となる、1ドル=3・98レアルで取引を終えた。
ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)の経済学者、マウロ・ロックリン氏は、「世界の二大経済大国同士が貿易摩擦を激化させるならば、周辺諸国への影響は免れ得ない」としている。
あるブラジル政府関係者は、「一時的には、『中国が米国から買わなくなった品物のシェアをブラジル製品が奪う』といった“小さな利益”を得るかもしれないが、世界経済の冷え込みによるマイナスの影響の方がずっと大きい」との見立てだ。世界規模の景気の冷え込みは、国際投資の機運をしぼませるため、ブラジルに投資資金が入ってこなくなると心配する声もある。
ただし、ブラジルは昨年、中国への輸出を81億ドル分増加させた。全国工業連盟(CNI)の調査によると、その半分(40億5千万ドル)は、米国産製品が中国に入らなくなった分のシェアを奪ったものだ。今年も大豆、とうもろこし、肉、綿などの対中輸出は拡大が予測されているが、CNIの国際貿易部門長ファブリツィオ・パンツィーニ氏は、「喜んでいられる期間は長くない。世界経済の冷え込みの悪影響は中期的視点で出てくる」と語った。
元社会開発省貿易局長のウェルベル・バラル氏は、「中国は、米国の農業牧畜業を狙い打ちにするだろう。農牧畜業はトランプ大統領にとって票田だからだ」と語った。
米国側は、来月28、29日に日本で開かれるG20首脳会議に合わせて米中首脳が会談する可能性が高いとし、トランプ大統領も13日、「有意義な会談にしたい」と語ってはいる。米中間で何らかの妥協点が見つかる可能性もあるが、それがいつになるのかは全く予測できない。
低成長予測に、ブラジル政府も予算カット
こうした状況下、ブラジル中銀が銀行や金融機関を対象に行う経済動向調査フォーカスは13日、今年のGDP成長予測を1・45%へと下方修正した。主要銀行も軒並み、成長率予測を1%台前半以下に下げる中、ブラジル政府は、税収減による予算の見直しを余儀なくされている。
今月初めに政府は300億レアルの予算を凍結し、政府としてのGDP成長率予測を2・5%から2・2%へ引き下げた。「GDPが2%近く成長すれば、さらなる予算カットは50億レアルで済むが、1・5%程度の成長なら、100億レアルのカットが必要」との声も経済政策関係者からは上がっている。