15日に発生した全国200以上の市での教育予算削減反対デモや、教育相の議会召喚決議案に307下議の賛成が集まるなど、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は先週、街頭、議会の両面からの圧力にさらされた。1月の政権発足直後に出した11の暫定令(MP)の議会承認期限切れまで2週間を切った中、同大統領は至急、議会との関係修復を求められていると、18~20日付現地各紙・サイトが報じた。
先週は、経済諸指標の悪化、止まらない国内総生産(GDP)の成長率予測下降、大統領長男フラヴィオ・ボルソナロ上議の違法不動産取引疑惑などが一気に吹き出し、現政権にとって最優先課題であるはずの社会保障制度改革さえ、存在感が薄くなってしまった。下院の約半数にあたる250人の議員を束ねる政党連合セントロンからは、「政府とは別の改革案を出そう」との声さえも上がりかけたほどだ。(その後ロドリゴ・マイア下院議長はそれを否定)
ただ、議会との関係修復を最優先しなければならない大統領が17日、携帯メッセージアプリ、ワッツアップで、「三権全てに存在する組織や団体との交渉抜きでの国家統治は無理」との作者不明の文面を拡散(本人は否定)したせいで、週明け後の議会と政府の緊張感は“融和モード”には程遠い。
大統領が交渉を嫌い、政局調整も人任せであることは周知の事実の上、大統領が「自分は最大限の努力をしているが、過去に得た恩恵を失うのを嫌う連中の抵抗にあっている」などと加筆したため、政党責任者や議員たちは、大統領は自分たちに責任を擦り付けていると憤っている。
MPの中で最優先されるべきは、省庁、閣僚数を22に削減することを定めた870号だ。これが2週間以内に上下両院で承認されないと、従来の29に戻す必要が生じる。セントロンを構成する政党の党首は、「週明けの様子を見る。大統領の言うことはころころ変わるから、合意成立は難しい」と語っている。
ボルソナロ大統領は昨年10月の大統領選で5800万票を得たが、その勢いを再び示すため、26日に政権擁護デモをボルソナロ陣営が行う計画もある。
ただ、昨年は「ボルソナロ氏の右腕として副大統領候補へ」との話も出ていたサンパウロ州議会議員ジャナイーナ・パスコアル氏(PSL)は、「大統領が自分を擁護するデモを招集? 冗談じゃないわ」「国民の支持を失っていることを知るべきよ」と発言している。
こうした中、18日付現地紙は、「ボルソナロ政権は発足直後に得られる“追い風”を潰してしまった。今年の経済回復の可能性はほぼ無くなった」との経済関係者の声を紹介した。
投資顧問会社MBアソシエイツの共同創業者ロベルト・デ・バロス氏は、「政府は政権発足直後という、極めて重要な時期にミスを犯した。市場関係者は一番支持が高いはずの時期に社会保障制度改革を軌道に乗せてくれるだろうと期待していたが、その絶好機は去った」と語っている。