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「日本祭りへの提言」への県連としての見解=ブラジル日本都道府県人会連合会会長 山田康夫

日本祭り会場をにぎやかに行進する祭り太鼓の子供たち

日本祭り会場をにぎやかに行進する祭り太鼓の子供たち

 去る5月4日のニッケイ新聞6ページで「巨大商業化した日本祭りへの提言/来場者のための本当のカイゼン」と題した特別寄稿として、5つの点で率直なご指摘ありがとうございました。
 しかしながら、一般への誤解を招かないためにも私の見解を県連(ブラジル日本都道府県人会連合会)として示させていただきます。

*シンポジュームでの講演

 はじめに、今年3月8日に開催いたしました「第1回日本祭り主催者シンポジューム」ですが、これは在サンパウロ日本国総領事館と県連が共催して、全伯的に浸透した日本祭りの質を向上させ、運営面においてより効率化させることを目標として開催いたしました。
 そのきっかけとなったのが、昨年1月に外務省が音頭を取って全伯で日本祭りなどを実施している関係者ブラジル14名、南米10名のB級グルメを体験する(日本の祭り)を目的に訪日したことでした。各人が日本で体験したことを、そのままで終ってしまうのが勿体ないということで、このシンポジュームが開催され、今後も許す限り続けて行ければと願っています。
 同シンポジューム開催の結果、各地方との情報交換により、例えばバイア州サルバドルなど、日本人・日系人が少ない地域でどの様に日本祭りを運営しているかなど、非常に興味深い話を聞くことが出来ました。これまで日本祭りはサンパウロの日系社会(県連)が主体となっておりましたが、このシンポジューム開催により、同等の関係を保ちネットワークを築く足掛かりが出来たことは大きな成果です。

*郷土食広場のカイゼンとTPS方式

 次に?カイゼン?されない郷土食広場ということですが、?カイゼン?によって各郷土食作りで「手を抜く」ということではなく、あくまでも「品質の向上」を目的にしています。確かに郷土食広場では待ち時間が長く、お叱りの言葉を受けているのも事実です。
 しかし、だからこそ?カイゼン?として?TPSトヨタ生産システム?を取り入れ、郷土食の品質向上に努めております。
 又、今回ご指摘いただきました「お好み焼き」の件につきましては、ご面倒でも直接担当者に指摘していただく事により質の向上につながると確信いたします。現在はまだ発展段階でありますが、決して無駄ではないということをご理解いただきたいと思います。
 TPS方式はサンタクルース病院でも取り入れ成果を出しております。県連では昨年から、各県人会の若手を主な対象にTPS方式の講習会を4、5回実施してきました。今年も5月上旬に講師を招き、45名の参加者で午前・午後と二コースに分かれ同講習会を行いました。その結果「決して手を抜くというのでなく、どうムダをなくし効率化を図り、品質をアップさせるか」ということを参加者が学び、私自身はじめて参加して日本祭りが目指す方向性は間違っていないと確信しました。
 また、「おもてなし」についても、エチケット講師・豊田瑠美さんに昨年から日本のおもてなし文化を教わっております。確かに数千人いるボランティアの一部ですが少しでも日本祭りに来て頂いた方々に良い印象を持ち帰って頂くよう努力を致しております。
 現在、日本祭りは各県人会・子供広場・高齢者広場などを含めて1日約4千人にも及ぶボランティアの協力を得て実施しています。現段階で全ての方が講習を受けているわけではありませんが、日本祭りの質を向上させるために努力を行っていることをぜひ、ご理解いただきたいと思います。
 これまでの日本祭りで感じられたご批判の声は、真摯に受け止めたいと思っており、今後もご指摘の声はお受けしたいと思いますが、その場で率直に言っていただくとありがたい限りです。

*郷土食の味覚

 郷土食の味覚については、各県人会も努力し少しでもレストランにないメニュー郷土料理を提供に努めておりますが、全ての県人会がままならないのも事実で、味覚についても個人差はございますが、少しでも多くの方に好まれる味を各県人会も反省会を行ない味覚向上に努めております。
 味覚の向上なしに、毎年の日本祭りにこれだけ多くの方々に来て頂けることはないと思います。

*発想の大転換

 発想を転換することは大切なこととは思いますが、20万人以上の来場者が訪ずれる現在の日本祭りで多く日本文化を発信するためには、かなりの経費がともなうことを承知していただきたいと思います。
 県連も経費削減の意味からも、これまでにサンバ会場、ジョッキークラブ、カンポ・デ・マルチその他数か所、開催候補地として視察させていただきましたが、経費面も含め現在の会場以外に条件が整った場所がなく、各スポンサー企業様からもご理解を得ております。
 県連では昨年から来場者調査を行ない、その結果を表やグラフで分かりやすくまとめておりますが、昨年の結果は勿論、もちろん110周年式典も重なりましたが、21万5千人が来場していただき、そのうちの59%は非日系人であることが結果として出でております。この様に、より深くブラジル社会に浸透してきていると自負しています。
 日本祭りで「日本文化を伝える」という意味において、ご指摘いただいた「営利主義」だけではないと強調したいと思います。そして日本祭りに携わった人の98%はボランティア(無報酬)で一個人の営利に走る事はありません。日本大好き人間の集まりです。日本祭りをより良く継続していくためには経費もかかり、日本政府・スポンサー企業様などからの協力に頼より、資金集めに重点を置かざるを得ないのです。
 県連をはじめ、各県人会・スタッフ・ボランティアなどの方々が努力していることもご理解いただければ幸いです。今回現場での生の声として率直にご指摘いただきました事を深く刻み込み今後の発展に努めてまいります。