今度の日曜の26日に、ボルソナロ大統領の支持者たちが、彼を改めて強く支持するためのデモを行なうという。仮想敵は、連邦議会で大統領の意見を通そうとしない、「古い政治家たち」なのだという▼だが、少しでも国内のニュースに目を通している人なら、現在のボルソナロ政権の政策が進捗を見ないのは、過去に例を見ないほどの「議会調整の弱さ」に尽きることは一目瞭然。第一党とはいえ、下院全体の約1割に過ぎず、ほとんどが新人議員では議会をリードできない。そのことは大統領に就任する前から言われていたことだ▼加えて、大統領自身から出される提案が、自身が「教育の充実」を約束していたのと逆行するような「連邦大学への支出3割減」や、全国の過半数の州知事たちが「これだとあまりに世の中が危険になる」とばかりに反対声明をつきつけられた銃携行の大統領令であり、反対されても仕方がない。こんな内容しか提示できないのは、下議時代の28年間に2、3案件しか法案を通せなかった大統領その人の力量に他ならない▼こういうことの積み重ねにより、今やテメル政権で回復の兆しを見せていた経済面での期待も白紙の状態に戻り、経済観測が10数週にわたって連続ダウンとの状況も実際に生まれている▼こうした状況で、冷静に物事が見ることができる人なら、「何を失政を人のせいに」との判断ができるはず。現に、「ジウマ大統領罷免」の運動に携わった最大の政治活動団体のふたつ、「ブラジル自由運動(MBL)」と「ヴェン・プラ・ルア」は26日の参加を見合わせる方向だ。ジウマ氏罷免の請求書を作成した弁護士でもあり、一時はボルソナロ氏の副大統領候補でもあったジャナイーナ・パスコアルサンパウロ州州議は、同デモへの不参加を呼びかけるなど、大統領の当選に寄与していたはずの人たちからも賛同を得ていない▼もう、こうなると多く残りがちなのは、「俺たちのミット(伝説的人物の意味で、ボルソナロ氏を礼賛する際のあだ名)をいじめやがって」と、政策内容も鑑みずに「個人へのシンパシー」でしか動かない人たちだ。そういう人たちは、「ボルソナロ一家のグル」と呼ばれる極右思想家オラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏を信奉し、自分たちの意見に反対するものは誰でも彼でも「コミュニスト」と呼び、連邦議会や最高裁の閉鎖も辞さず、自分たちに反対する政治勢力は解体すればいいと思っているような人たち。さらに言えば、いざボルソナロ政権がはじまってみれば軍人閣僚たちが大統領本人より冷静であることも判明したことで、今や軍よりも右であろうとさえするタイプだ▼コラム子は、ボルソナロ政権がゆくゆく行き詰ってきたときには、そういう状況も出てくるであろうとは思っていたが、まさか就任半年以内にこの末期症状が現れるとは。仮に世がこういう人たちのなすがままになったら、もうベネズエラのことさえ馬鹿にできなくもなるはずだ▼デモへの参加を表明している政治家や企業、組合など、社会的な立場にある人たちは、そうしたアナーキーな集団と一緒にされたくないとばかりに、「あくまで現状の政治問題に沿った形で」ということを表明している。だが、なかば「大統領にも非がある」ということが薄々わかっているような人たちが、果たして狂信的支持者ほどに声を大にしてデモを引っ張ることができるかとなると、コラム子には大いに疑問だ。(陽)