ボルソナロ大統領は5月31日、福音派宗教団体の年会の席で、「福音派の最高裁判事がそろそろ必要だ」と発言した。それは、大統領自身が「セルジオ・モロ判事を最高裁へ」と発言した18日後の発言で、最高裁が同性愛者差別にも人種差別法が適応されるべきか否かを審理している最中での発言だった。1日付現地紙が報じている。
ボルソナロ大統領のこの発言は、ゴイアス州ゴイアニアで開催された、ペンテコステ系の福音派最大教団「アッセンブリーズ・オブ・ゴッド(以下ADD)」の年会の席でのことだった。
大統領が「司法と宗教を混同しているなどといってくれるな。宗教を持っている、いないは尊重されるべきだ。そろそろ福音派の最高裁判事が出てきてもいいじゃないか」と語ると、ADDの信者たちからは大喝采が起こった。
ボルソナロ大統領は5月13日に「最高裁判事に空席ができたら、約束通り、セルジオ・モロ法相を指名したい」と発言し、物議を醸したばかりだ。大統領が指名した最高裁判事の承認は上院に決定権があり、その立場を無視した物言いがなされたと判断されたこと、行政府(連邦政府)の大臣だった人がすぐに司法に行くことに関する反発があったためだ。
だが、モロ法相はカトリック教徒であるため、その発言から3週間もしないうちに意見を変えたのか、と既にとらえられている。
加えて、最高裁内部では「同性愛者差別は人種差別法の対象となるか」の審理を行っており、現時点までに票を投じた6人の判事が全員、「差別にあたる」と判断し、同性愛嫌悪の強い福音派が喜ばない結果になっている最中での発言だった。ボルソナロ氏の支持基盤にはかねてから福音派が多い。
この審理の続きは13日に行われる予定だが、この日は同性愛者差別に関する法案(上院で審議中)とも関連する、同性愛者からの輸血や性転換者が使用するトイレの問題など(いずれも過去に審理を中断したりしている)についても審理を行うのではないかと見られている。
ボルソナロ氏の最高裁判事の希望をめぐる発言に関しては、「大統領の言う通りに福音派の判事を入れてもいいのではないか」とする最高裁判事もいるという。
議会が同性愛者差別に関する法案を審議している最中に、最高裁がこの問題を取り上げたことに関しては、最高裁が先に判決を下せば議会の権限を侵害するとの声もあるが、最高裁の別の判事は「同性愛者たちの苦しみを長引かせる」「連邦議会はマイノリティへの暴力を禁止する方向に進んでおり、逆行させるようなことはできない」とけん制している。
最高裁判事は2020年にセウソ・デ・メロ、21年にマルコ・アウレーリオ判事が定年を迎える。