「ブラジルのイタリア料理店では『アルデンテにして!』と前もって注文をつけないと、腰のあるマッサがでてこない」となげくグルメな人に最適なレストランが、3月にサンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区に開店した。イタリア・レストラン「Diò Cucina」(Rua Borgues Lagoa, 189 Vila Mariana)だ。店名は、地中海に浮かぶ伊サルデーニャ島の方言で「神」を意味する。漁民が多い島で、イワシを意味するサルジーニャ(英サーディン)はここからきている。
わざわざイタリアからシェフを呼んでメニューを作らせ、そのまま駐在させた。当地イタリア料理店の多くは二世以降の世代が継承するうちに、良くも悪くもブラジル的料理に。ところが、ここではまさにイタリアそのままの味が楽しめる。
シェフの名はマルコ・バルビエリ(Marco Barbieri)。店主アルベルト・トプジアンさん(Alberto Topgian JR、49)によれば、「シェフはレストランの魂。彼は北イタリアのボローニャ出身で、手作りするパスタ類はオリジナル。ここでしか食べられません」と敬意を表する。ボローニャ県は「肥満都市」との愛称で呼ばれた美食の都。
店主の妻がイタリア系二世で、日ごろから妻の家族のイタリア料理に慣れていた関係からレストラン開店を思いついた。もともと25年前から同じ場所でパンケッカ・レストランを経営していたが方向転換を図った。
シェフは「恋人の日」(12日)に向けて、さっそく新作メニュー2作を用意した。一つ目は見るからにロマンチックな一品。ハート型の新鮮な手作りマッサ(水牛のモッサレーラ・チーズ入り)を、ポモドーロ(トマト・ソース)に浮かべた「Cuore in Amore」(55レアル)だ。
二つ目は、パルメザンチーズの鶏肉リゾット「Risotto alla Fragola」(65レアル)。イチゴをあしらっているのが恋人向け。
通常メニューで一番人気は、ここでしか食べられない手作りパスタを使った「Bomboloni di Mascarponi」(65レ)。「黒いダイヤ」とも呼ばれる高級食材・黒トリュフ(Trufas negras)を使ったパスタを、イタリア風クリーム・チーズのマスカポーネのソースに浮かべたもの。まったりしたパスタとさわやかなクリームが共存するお薦めの一品。
海鮮パスタが好きな人には「Linguine Al Frutti Di Mare」(69レ)。たっぷりのエビ、イカ、タコ、貝などを、北イタリアのジェノバ風トマトソースでしっかりとまとめたもの。
肉類としては羊肉を使った「Carré de Cordeiro no lardo de presunto parma e ervas」などがよく出るという。夜のみピザがある。週末は家族向け2~4人向けメニューも。ワインも30種類を常備。デザートも各種、お薦めは本格「Tiramisù Classico」(24レ)。
全110席。会社が会議やパーティでも使えるようにプロジェクターを装備した20人用個室もある。キレイな店内の入口奥の壁には、イタリア移民の家族写真が何げなく貼られている。「あれは妻の家族の写真だよ」とのこと。たまには本格イタリア料理を楽しむのもいいかも。