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入院者の半数以上、治療放棄=2年で税金3500万レ投入=効果検証の体制もずさん

サンパウロ市セントロ周辺の、クラコランジアの様子(Milton Jung/Flickr)

サンパウロ市セントロ周辺の、クラコランジアの様子(Milton Jung/Flickr)

 ブラジルの地元紙がサンパウロ市保健局のデータをまとめたところ、この2年間でサンパウロ市が用意した薬物依存症から抜け出すための入院治療プログラムを受けた人の56%は、途中で治療をやめていたことが分かった。
 これは、ジョアン・ドリア現サンパウロ州知事(民主社会党・PSDB)時代に始まり、後任のブルーノ・コーヴァス市長(PSDB)にも引き継がれた薬物依存症治療政策だ。
 入院期間は2~7日が全体の46・2%と最も多く、8~15日の16・2%が続く。22~30日と31日以上は合わせて23・2%だ。0~1日という人も5・7%いた。
 退院許可が出る前に病院から出て行ったが、再び病院に舞い戻ってきた人も54%いた。 
 入院患者1人あたりの費用は、1日約230レアルで、17年5月26日から19年5月28日までにかかった費用総額は3500万レアル(10億5千万円)に上る。これらは全て、市の負担(=税金)だ。
 入院後、退院許可が出るまで留まり、その後は回診や投薬で治療することになった患者360人(入院治療者の3%相当)の、その後の経過を示すデータは不足しており、「いつからいつまでにいくら公費を使い、何人が社会復帰できた」という、政策の有効性を客観的に示す情報がない。
 同政策のコーディネーター、アルトゥール・ゲーラ氏は、「サンパウロ州調査研究支援機関(Fapesp)と共同で、治療政策を受けた患者の回復経過を評価する仕組みを作ろうとしている」と語るに止まった。
 市の治療プログラムを受け、社会復帰を果たした後、州内陸部で家族と暮らすダニーロ・ダ・シルヴァさん(32・じゅうたん製造業)は、サンパウロ市セントロの薬物汚染地帯(クラコランジア)に数カ月住み着き、薬物密売にも手を染めていたが、市の職員と出会い、治療を受けることを決めた。
 入院期間は33日に及んだ。ダ・シルヴァさんは3カ月後の現在も医者の経過観察を受けており、薬物のせいで破綻していた結婚生活にも戻れた。「毎日が(薬物の誘惑との)闘い」と語る。
 コーヴァス市長は、クラコランジアを徘徊する依存者を中心に、入院させる患者の数を増やそうとしている。
 ボルソナロ政権下の対薬物汚染政策も、既に薬物中毒になっている患者の身体的苦痛を和らげることよりも、中毒者を薬物から遠ざけることを優先事項としている。