サソリの被害が集中しているサンパウロ州内陸部で、使用制限が設けられている強力な農薬が、サソリを殺すための薬として、普通に売買されているという。
問題の農薬は、ノミ、ゴキブリ、アリ、シロアリなどの害虫駆除に用いる、フィプロニルという成分を含む製品だ。
フィプロニルは、神経伝達物質のGABAの作用を阻害し、神経伝達を遮断するため、広範囲の昆虫に対して高い殺虫効果を持つ。また、効き目が出るのが遅く、薬剤を混ぜた餌を食べた個体が巣に戻って死ぬため、その固体の糞や死骸を食べた仲間も死ぬという、巣全体へのドミノ効果が期待できる。
ただ、この農薬は人体や家畜にも深刻な影響を及ぼすため、特別な許可を受けた企業や処方箋を持つ農家しか購入できないはずなのに、同州内陸部のサンジョゼ・ド・リオ・プレット市などでは、処方箋や登録手続きを要求される事もなく、入手できるという。
フィプロニル入りの農薬が引き起こす主な症状は、頭痛、セキ、発作、めまい、気分が悪くなるなどだが、失神する場合もあり、専門医は「軽い気持ちで扱ってはならない」と警告している。
農薬販売の監査は州の管轄で、サンパウロ州農務局は、不法な形で農薬を販売している事が判明した業者は告発し、商品も押収しているという。
昨年は、サソリに刺された人が全国で約15万5千人いた。サンパウロ州北西部は被害者が集中している地域の一つで、アラサツーバ市で368人の被害者が出た他、ヴォツポランガ市では8歳の男児が死亡する例も報告された。
サソリに刺される事故は、サソリを見つけて殺そうとする時に起こりやすいため、専門家は、サソリを見つけたらバケツなどをかぶせて捕獲した後、ゆっくり、時間をかけて捕まえるようアドバイスしている。
また、3度も刺されたために件の農薬を購入し、家中に撒いたという商人の1人は、「蜘蛛やゴキブリは死んだけど、サソリの死体は見ていない」とし、農薬の効果に疑問を呈している。(8日付G1サイトより)
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