ブラジル日本移民111周年の移民祭を迎えるにあたり、今日のブラジル日系社会の繁栄を築いた先駆移民の御苦労を偲び、開拓先没者の御霊に対し衷心より哀悼の意を表する次第でございます。
本年は「令和」の新しい元号の下で行われる初めての移民祭であります。大きな節目に行われる「令和元年ブラジル日本人移民111周年」の意義ある移民祭を、皆様と共に、心よりお慶び申し上げます。誠におめでとうございます。
令和元年の移民祭に際して、皇太子殿下であらせられた時代から常に日系社会を大切にお思いになられご退位なされた上皇・上皇后両陛下に対し、心からの感謝とご長寿を祈念申し上げますと共に、今上天皇・皇后両陛下の御健勝と日伯両国の繁栄を祈念申し上げます。
笠戸丸がサントス港に着港してから本年は111年目の年でありますが、昨年の2018年には「ブラジル日本移民110周年記念式典」に皇室より眞子内親王殿下のご臨席を賜り、盛大な移民祭が挙行されましたことは感慨無量の慶びでした。
日系社会が一致団結し挙行した同式典は110年の歳月を経た現在でも日系社会が益々繁栄の道を辿り「皆様方の子孫である我々は、皆様方の血と汗の結晶を礎として、このブラジルの大地にしっかりと根を下ろし、このようにたくましく生かされて頑張っております」と、先駆者に対して何にも勝る良き報告となったのではないかと考えております。
移民の日に思い起こされますことは、初期移民の皆様が、見ず知らずの途方もない、地球の反対側のこのブラジルまで来られた動機についてであります。それは様々な事情や、それぞれの思いで来られたものと、当時の日本と世界の情勢を鑑みながら考えさせられます。
一般的に言いますと、この世に生を受けた者は、その一人ひとり、それぞれ違った人生の物語がありますが、誰もがその一生は愛情に満ちた幸せなものであることを願っているものと思います。幼かった私も気がつけば4人の孫に恵まれるまでとなり、最近では、神戸港で意気揚々と移民船に乗り込む大事な我が子や、かわいい盛りの孫を遠いブラジルへ送り出す年老いた当時の親の心情や心境にも考えが及ぶまでになりました。
また、様々な立場で色々な想いが交差する港で、そこに居合わせた全員がもっていた唯一共通した心情とは、大切な人の限りない「幸せ」を願う祈りにも似た想いであったろうと推測するものであります。
そんな幸せを夢見て新天地に向かう船旅の途中において、実に多くの人々の命が失われていました。移民船内で亡くなり、その遺体を海に葬らなければならなかった人たちも多く存在しており、遺族の胸中察するに余りあります。「移民の日」の本日は、日系社会全体でそのような先駆者たちにも想いを寄せ、志半ばにして亡くなられた多くの先人たちの御霊に対し心からの哀悼を捧げる日でもあります。
ブラジル日本移民111周年を迎えるにあたり、全てが目まぐるしく変化・変貌している情報化時代における日系社会の今後の在り方を考えて見ます時、国際社会の一員としての存在を強く意識しながら行動する必要に迫られているものと思われます。
その意味におきましても、まず初めに、各国における日系社会の歴史と現状を把握する必要があります。ブラジルと同様にどの国の日系社会でも多くの苦難困難に屈することなく、「教育は財産」として子孫のために惜しみ無い投資を行ってきた先駆者の存在があったということです。
昨年はハワイを初めとする北米が日本移民150周年を迎え、本年2019年はペルーとボリビアがそれぞれ日本人移住120周年を迎えます。そのような中、昨年の海外日系人大会において「世界の日系人の連携を促進し国際社会への一層の貢献を果たすため、6月20日を『国際日系デー』とする」という大会宣言が出されました。
本年は移民111周年を迎える我々ブラジル日系社会もこの宣言に足並みを揃え、これからはブラジルはもとより世界に広がる日系人とも連携を密にし、日系人ならではの手法により国際社会へ寄与してまいる所存であり、またそれが先駆者に対する最大の恩返しでもあると確信する次第でございます。
最後になりましたが、日系社会の皆様、ニッケイ新聞をご愛読の皆様のご健勝を祈念し、ブラジル日本移民111周年を迎えるにあたり私の挨拶と致します。