サッカー南米選手権(コパ・アメリカ)の日本代表初戦、チリ代表との試合が17日午後8時から、サンパウロ市のモルンビ・スタジアムで行われ、4―0で大敗した。しかし、日本からサポーター(応援)が駆けつけ、当地の日系人やブラジル人もサムライブルーのユニホームに身を包んで一丸となり、日本代表へ熱い声援を送った。
会場には約2万3千のサッカーファンが詰めかけ、会場を震わすほどの熱狂ぶり。観客の大半は赤いユニホームのチリ代表サポーターだったが、客席の中にはいくつもの日章旗がはためいていた。
試合前、スタジアムに友人と向かっていたカルロス・オリベイラさん(サンパウロ市在住)に声をかけると「恋人が日系人で、一緒に日本代表を応援している」という。好きな選手は今大会は選抜外の本田圭佑選手で「2―0で日本が勝つ」と力強く語った。
午後8時、試合が始まり、走り出した選手に大きな声援が送られた。数少ない日本代表サポーターも、チャンスなどの場面では声を張り上げ応援歌「ニッポンコール」を熱唱した。
先発メンバーにはスペインリーグのレアル・マドリード移籍が決まって注目の高まる久保建英選手、10番を背負う中島翔哉選手らが出場。ゲームキャプテンは柴崎岳選手が務めた。
前半は日本が果敢に攻め込んだが、41分にチリが先制。そのまま1―0で前半を終えた。
ハーフタイムには、ちょんまげの仮装で日本のサッカーファン内では有名なサポーター「ちょんまげ隊長ツンさん」こと角田寛和さん(56、千葉県在住)が、ブラジル人、チリ人らの写真撮影に応じていた。
角田さんは、フランスで女子サッカーW杯日本代表戦の応援に行った後に訪伯。注目は中島選手で「前半は運悪くセットプレーで先制されたが、後半で巻き返せる」と冷静に話し「日本人は少ないが日系人も一緒に応援してくれて、選手に応援が届いているのでは」と笑顔を見せた。
アレクサ・サンドルさんは日系三世の恋人と2人で応援に。非日系ながらカラオケで演歌を歌う日本文化通で、好きな選手は控えのゴールキーパーの川島永嗣選手。日本語で取材に応じ「まだ希望はある。後半頑張ってほしい」と話した。
後半9分、チリは追加点を奪い、37、38分には立て続けに2本のゴールを決め、日本は4―0の大敗を喫した。
鹿児島県から来たという「じゃんけんマン」こと尾曲智幸さん(29)は、応援しているという同郷出身のゴールキーパー大迫敬介選手について「動きは良かったが失点はアンラッキー(不運)だった。ただデビュー戦にしては落ち着いており、今後に期待できる」と試合を振り返った。
井戸瑛介さん(21、兵庫県在住)は「前半は選手の動きが良かったように見えたが、後半に崩れた。次戦も応援に行くので今度は勝ってほしい」と期待を語った。
次戦は20日(現地時間)、相手はウルグアイ。3戦目は24日にエクアドル戦の日程。
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17日の日本対チリ戦では、試合の後に日本代表サポーターらがゴミ拾いを行った。サポーターらがゴミ袋を配布し、周囲の日系人、ブラジル人らも手伝い、子供達は一生懸命に走り回ってスタジアムのゴミを回収した。彼らが膨らんだゴミ袋を集積所へ運ぶと、周囲のチリ代表サポーターから拍手と歓声が上がった。外国メディアでは、このゴミ拾いが日本の名物のように報じられるそうだが、「美しい日本文化」と他人事にするのではなく、自分のゴミの片付けくらい皆がしてほしいものだ。
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試合の直前、日本代表を応援する日本人、日系人らに、感謝や「福島復興」のメッセージが書かれた鉢巻きが、サポーターの角田寛和さんから手渡された。彼によれば、鉢巻きは2011年に東日本大震災の被害を受けた福島県や宮城県石巻市の子供らにメッセージを書いてもらったそう。「ブラジルに来られない子供達の代わりに、この鉢巻きを持って来ている。子供達もここで一緒に応援している」と語った。初戦は負けたが、次戦ウルグアイは無理でも、最後のエクアドル戦まで手を抜かず、今回のように日伯両国一丸となって応援し、ぜひ1勝をあげてほしい。