28~29日に大阪で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席のため、27日に日本に到着したボルソナロ大統領が、「ドイツはブラジルに学ぶべき」と発言し、物議を醸していると27日付ブラジル国内紙サイトが報じた。
今年就任したボルソナロ大統領にとって初の国際舞台ともいえるサミットだが、到着後の最初の取材で、「環境問題も含め、ブラジルにはドイツが手本とすべき例がたくさんある。ドイツはまだ石炭などの化石燃料に頼っているが、ブラジルは違う。ドイツはブラジルから学ぶべきだ」とぶちまけたのだ。
さらに、「過去の大統領のように、他国からの叱責や警告を受けるために来たのではない」と語り、ブラジルに向けられた批判的な表現や態度に対抗する姿勢も見せた。
これらの言葉は、ドイツのメルケル首相が26日にドイツ議会で、「ボルソナロ大統領とアマゾンの森林伐採について話し合いたい」と語った事に対する反論だ。メルケル氏は議員からの質問に対し、ボルソナロ氏の言動への懸念を示した上、サミットの場でアマゾン開発に関して明確な討論を行いたいとの意向を表明した。
一連の発言のきっかけとなった質問は、法定アマゾンの森林伐採面積増加や、ボルソナロ氏が農地開発や鉱物採掘のためにアマゾン開発を推奨する発言を繰り返している事、アマゾン保護のためのアマゾン基金を所有地内に水源地などの環境保護区を持つ生産者への賠償金の支払いにも使いたいと言い出した事などを懸念する、欧州の340の非政府団体(NGO)を代表して発せられた。
これらのNGOは、ブラジルがアマゾン開発を推奨する姿勢をとり続けるなら、欧州連合(EU)とメルコスルとの自由貿易協定締結も止めるべきとの姿勢を見せている。
ドイツは、ノルウエーに次ぐ、アマゾン基金への主要投資国で、両国は既に、アマゾン基金の使途変更要請を拒否する姿勢を明確にしている。
メルケル氏と同様の姿勢はフランスのマクロン大統領も見せており、27日も再度、「ブラジルがパリ協定を離脱したら、ブラジルが参加する自由貿易協定には一切署名しない」と発言した。
アマゾンでの鉱物採掘自由化、先住民保護区指定の枠縮小、環境保護のための機関や団体の規模縮小といった、ボルソナロ氏の発言や政策を、国連人権委員会が「世界的な地球温暖化防止への取り組みに逆行するもの」と批判した事は、26日付ブラジル国内紙などが報道。同日付『サイエンス』誌も、アマゾンの森林伐採増加を批判する欧州の科学者602人が、ブラジルからの輸入を制限するよう求めた署名入りの文書提出との記事を掲載している。