【既報関連】6月28日にブリュッセルで基本合意に達した、EUとメルコスル間の自由貿易協定は、正式調印までに、細部の詰め、双方の議会承認が残っている。しかし、約20年かけた交渉の末に基本合意が結ばれた意味は大きく、2日付ブラジル各紙も詳細を報じている。
ブラジルの経済省貿易局長のルーカス・フェラス氏によると、EU側とメルコスル側は、製品区分ごとに関税引き下げの程度や期日が別々に定められているという。
工業製品に関して見ると、EU側は、協定発効後10年以内にメルコスル諸国から入る全ての製品への関税をゼロにするが、メルコスル側は最初の10年間で72%を関税ゼロにし、その後の5年間でその比率を90・8%に引き上げる。
農業製品では、EUが10年以内に81・8%の製品の関税をゼロにするのに対し、メルコスルは67・4%をゼロにする。
現在はEUが35%の関税をかけている自動車は、10年以内に税率が17・5%(最初の7年間は年5万台以内の制限付き)に引き下げられ、その後5年以内に関税ゼロとなる。
メルコスル加盟4カ国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)の内、ブラジルは多くの製品部門で最大の生産者であるため、今回の合意の最大の受益者だと、ブラジル政府関係者は認識している。
メルコスル側は合意成立の直前も、その他の部門の輸入量制限撤廃や枠拡大を求めて交渉を継続した。
例えば、鶏肉にも関税ゼロ適用量が定められているが、メルコスルはその枠を18万トン拡大することに成功した。2018年にブラジルからEUへ輸出された鶏肉の総量は20万トンだった。
砂糖の場合、メルコスル側に割り当てられる関税ゼロ適用限度は18万トンとなった。ブラジルは昨年、2万2千トンの砂糖をEUに輸出した。
「関税ゼロ適用量はメルコスル4カ国全体に割り当てられるが、多くの製品において、ブラジルが域内最大の輸出国であることは間違いない」とフェラス氏は語る。
同氏は1日、「交渉が進んだのは、メルコスルが、製品の原産地に関わる交渉でEU側に譲歩したから」と明かした。
EUから輸出され、関税ゼロ措置の恩恵を受ける製品は、原材料に至るまでEU産でなくてはならなかったが、メルコスルが譲歩し、例えば、原材料は中国産だが、EU域内で製造した製品も、自由貿易協定の枠内でメルコスルに売ることが可能になり、関税免除対象とされる。
また、エルネスト・アラウージョ外相は2日、同件に関する記者会見の場で、「合意を承認する準備の出来ている国は一つもない」と語った。これはフランス政府広報官が「(フランスは)合意を承認する準備が出来ていない」と発言したことを受けてのものだ。
これは、「EUとメルコスルは大枠で基本合意がとれた段階で、細部では各国の立場の違いもある。フランス政府の声明を『合意の危機?』などと、大げさに捉えるべきではない。ブラジルにもまだ詰めたい部分がある」との意図での発言だ。