ボルソナロ政権の最優先課題である社会保障制度改革の下院本会議での審議が9日に始まった。憲法改正案である社会保障制度改革は、上下両院で議員定数の60%以上の賛成が2回必要だが、これまでの度重なる政府と議会との折衝や、採決直前の政府の譲歩などにより、下院承認に必要な票数308に達しそうな情勢だ。9、10日付現地各紙・サイトが報じている。
連邦政府は、これまでの政権も行ってきた、どうしても重要法案を可決させたい時の〃奥の手〃、議員割り当て金(emenda parlamentar)の支払い許可を7月に入って積極的に行っている。
9日は、その他にも農村族議員の要請に応える決議の審議や、INSSで女性が年金を満額もらうために必要な最低負担年数を40年から35年へと変更する決議の審議に時間をとられ、社会保障制度改革案の審議が始まったのは午後8時48分からだった。
審議では野党が出した、「社会保障制度改革案審議を(9日の)議題から外すべき」との要請が賛成117、反対331で否決された。
実質的には時間稼ぎ程度の効果しか見込めないが、社会保障制度改革の審議を休会前に終わらせるための合意を根底から覆す野党の要請には331人が反対。これらがそのまま社会保障制度改革賛成に回れば、承認ラインの308を上回る。
パウロ・ゲデス経済相が執着していた「10年間で1兆レアル規模」という歳出削減額は、その後、各所での譲歩で規模が縮小。9日も連邦警察、連邦道路警察、刑務所職員などの治安系職員や教師、検事たちが年金受給条件の緩和を目指して動いた。
これらの要求を全て受け入れると、歳出削減規模は10年間で9千億レを下回ってしまう。現状の歳出削減規模は9330億レだが、これは一連の制度改革で生じる歳出増535億レを含めた数字だ。既に、実際の歳出削減規模は8795億レに落ちている。
昨年の選挙期間中から、「治安回復」を主要公約の一つに掲げ、警察官らの支持を得てきたボルソナロ大統領は、特別委員会が警察官らへの恩恵を守らなかったため、一部の支持者から「裏切り者!」と謗られた。
ボルソナロ大統領は先週から、警察年金は別法案で対応すべきと、警察官の恩恵を守る発言を繰り返している。
社会保障制度改革案は、特別委員会でも、基本文書(texto-base)と修正動議(destaque)に分けて審議されたが、下院本会議でもそうした修正動議が出ており、個別採決となりそうだ。
9日午後9時現在の修正動議は74出ていた。その内、バンカーダと呼ばれる特定の目的を持った議員団によって提出された修正動議16件は今後審議されるが、個々の議員が提出した58の修正動議はまとめて否決された。
ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、2回の下院採決を出来れば今週中、遅くとも休会に入る今月18日までに終えたい意向だ。