ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》社会保障制度改革=修正動議を続々と採決=歳出削減効果、徐々に縮小=女性や警察の受給条件緩和=10年9千億レアル削減も危うし

《ブラジル》社会保障制度改革=修正動議を続々と採決=歳出削減効果、徐々に縮小=女性や警察の受給条件緩和=10年9千億レアル削減も危うし

修正動議の審議は11日も日付をまたぐまで行われた(Lula Marques)

 【既報関連】下院が10日の本会議で、社会保障制度改革案の基本文書(texto-base)を賛成379、反対131の大差で承認後、11日からは修正動議(destaque)の審議・採決が始まり、「女性のINSS(国立社会保険院)年金満額受給条件緩和」、「遺族恩給規定の変更」、「警察の受給開始年齢引き下げ」などが承認された、12日付現地各紙が報じている。

 社会保障制度改革の議論は、歳出を削りたい政府と、支持母体の損を抑えたい議員とのせめぎあいに収斂する。
 「女性のINSS年金満額受給条件緩和」に関して、「女性が年金を満額受給するために必要な年金負担年数を40年から35年に変更する」は9日に事前合意が取れており、11日に行われた採決の結果は、賛成344、反対132だった。
 民間企業に勤める女性が、年金受給のために最低限必要な負担年数は15年だ。15年負担し、年齢が62歳に達していれば、年金を受け取ることは出来る。しかし、15年負担しただけだと、満額の60%しかもらえない。その後1年ずつ余計に負担することで、受給額は2%ポイントずつ上がっていき35年の負担で満額受給となる。
 なお、男性の最低負担年数は20年、満額受給にはさらに20年の合計40年が必要だったが、12日の審議では男性も最低負担年数15年に変更された。これで、女性と男性の違いは受給開始最低年齢(女性62、男性65)だけとなる。
 「死亡恩給規定変更」に関して、当初の案では支給額が法定最低賃金を下回ることも想定されていたが、「受給者個人の収入が死亡恩給のみの場合、支給額は法定最低賃金を下回ることはない」に変更された。
 「警察官の受給開始年齢引き下げ」に関しては、基本文書では「男女共に受給開始最低年齢は55歳、25年以上の実務勤務と30年以上の年金負担が条件」だったのが、修正動議では、「連邦政府に雇用されている警察官(連邦警察、連邦道路警察、連邦刑務所職員など)は、(現行制度で年金受給のために必要な残り負担年数の倍の年数を負担することを受け入れる条件付で)受給開始最低年齢を、男性53歳、女性52歳とする」
となった。警察官に配慮した修正動議は、ボルソナロ大統領所属政党である社会自由党(PSL)の支持も得ており、賛成467、反対15という大差で承認された。
 経済省社会保障労働特別局ロジェリオ・マリーニョ局長は、「承認文書が最終的にどうなるか、まだわからない」と、歳出削減規模がいくらに落ち着くか明言を避けた。
 社会保障制度改革成立までにはまだ、2度目の下院採決、上院憲政委員会での審議、2回の上院本会議承認などのステップが必要だ。議会は18日から31日まで休会となるため、最終的な決着は9、10月に持ち越される可能性も十分だ。