【既報関連】先週9日に始まった社会保障制度改革の憲法改正案の下院本会議審議は連日、日付が変わるまで審議、採決を繰り返し、基本文書が10日に承認された後も、修正動議の採決が12日まで長引いた。ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は当初、2週間程の休暇に入る18日より前に2度目の下院採決を行いたいと考えていたが、2度目の下院採決は休暇明けの8月6日以降になりそうだとの見解をオニキス・ロレンゾーニ官房長官が明かした。13~15日付現地各紙・サイトが報じている。
社会保障改革案の基本文書は10日に379票の賛成を得て、1回目の承認がなされた。だが、その後の修正動議の審議で、INSS年金満額受給に必要な年金負担年数が40年から35年に修正されたり、教育や治安系の職務に就いている連邦公務員(教員、警察官、刑務所職員、少年院職員など)の受給条件が緩和されたりした。
政府の経済政策班は国家歳出削減効果はまだ、「10年間で9千億レアル」を保っているとしているが、社会保障問題に詳しい経済学者のパウロ・セルジオ・タフネル氏は、現行案の歳出削減効果は10年間で8200~8500億レアル程度と概算している。
タフネル氏は、「歳出削減効果は当初の1兆レアル規模から、8千億レアル程度に落ち込んだが、2年前成立目前まで行っていたテメル政権の案(JBSショックで頓挫)では、削減規模は4200億レアル程度だったことを忘れてはいけない」と語る。
これに対し、経済省社会保障労働特別局のロジェリオ・マリーニョ局長は、「歳出削減規模は9千億レアルを割り込まないはず。6月に承認された年金不正受給の防止関連暫定令、MP871が機能し始めれば、10年間で2千億レアルの歳出削減となり、合わせて1兆1千レアルの削減」と語る。
ただ、本来の歳出削減規模は、年金不正受給防止MPの効果を計算にいれずに計算されていたはずなのに、今になってそれを持ち出すのは、「1兆レアル削減を望んでいたゲデス経済相への忖度(そんたく)」や、「詭弁」の域を出ない。
上院既に賛成多数の情勢
また、15日付現地紙は既に、上院での票読みを掲載した。社会保障制度改革の成立には、上院でも定数81の60%以上、49票の賛成が2回必要だ。
下院で修正動議の審議と採決が行われていた時点で、上院でアンケートを行ったところ、42人が社会保障制度改革に賛成、11人が反対、15人が「修正動議の採決結果が出るまで返答できない」、7人が捕まらず、1人が「決めかねている」、4人が「答えたくない」だった。残る1人は明記されていないが、ダヴィ・アルコルンブレ議長(DEM)だと推定される。