「『良いものを食べていない人がいる』なら分かるが、『飢餓の問題がある』は大嘘」と発言した大統領は、午後になって、「飢餓の問題も少しはある」と訂正した。
20日付ブラジル紙は、「大統領は『飢餓などない』と言ったが、国内では今でも、年6千人が栄養失調で命を落としている」と、保健省の公開データを基に報道した。
地元紙が参照したダッタSUSによると、2008年から2017年までの10年間では少なくとも6万3712人が栄養失調で亡くなった。1年平均で6371・2人、1日平均17・4人だ。
6万3712人には「軽度、中度、重度のたんぱく質、エネルギー栄養障害」が原因で亡くなった人が含まれる。ブラジルではまだ、クワシオルコル(たんぱく質摂取量が不十分で起こる栄養障害)や、マラスムス(体内に備蓄されたエネルギーとたんぱく質が全て枯渇するタイプの栄養障害)も発生している。
クワシオルコルやマラスムスでは、体内の器官が正常に機能しないため、身体は痩せ細っているのに、お腹だけ不自然に膨れ上がる。
朝食会で、スペイン紙の記者に「ロドリゴ・マイア下院議長は国内の格差を心配しているが大統領の見解は?」と問われた大統領は、「他の国で見るような、骸骨のようにやせ細った人が路上に佇んでいるのを、我が国で見かけたかい?」と言葉を返した。
また、ボルソナロ大統領は、「90年台後半のカルドーゾ政権以降、民主社会党(PSDB)も労働者党(PT)も、富の再配分の大義名分で補助金を与えただけ」と過去の政権を批判した。
同日午後、サッカーの日の記念式典で、ボルソナロ大統領は、「確かに少数のブラジル人は飢えに苦しんでいる。農地もふんだんにあり、水資源も豊かな我が国において、こうした現実は受け入れがたい」と発言。「それは朝の発言を訂正するという意味か」と問われると、苛立ちを隠さず、「あまり細かいこと言うならもう帰るぞ。現に記者団にやせ細った人は一人もいないだろ。ブラジルに飢えの問題はあるが、俺のせいじゃない。ずっと前からのことじゃないか。それを解決しようとしているのに」と語った。
15日の国連食料農業機関(FAO)の発表によれば、04年/06年のブラジルには栄養失調者が4・6%いたが、16年/18年は2・5%以下に減った。だが、飢餓人口は、10年の490万人が14年には510万人、17年には520万人(貧困者740万人)に増えた。これらの数字は、ブラジルでは「経済危機により、飢餓や貧困の現状が悪化した」ことを示している。