【既報関連】1月25日に起きた、ミナス州ブルマジーニョの鉱滓ダム決壊事故でパラオペバ川が死んだ事を最も強く感じているのは、川辺に住む先住民達だ。
ベロ・オリゾンテ(BH)大都市圏サンジョアキン・デ・ビカスにある先住民部落ナオ・ショハンに住むパタショー・ハン・ハン・ハンエ族(以下、パタショー族)は、川岸に延々と続く鉱滓を毎日見て暮している。
ハヨ酋長は「我々にとり、この川の死は部族の仲間が死んだのと同じ」と言う。「我々は子供に洗礼を授けるのにも、身を清めるのにもこの川を使っていた。パラオペバ川は姉妹だ。その姉妹が鉱滓で死んでいくのを目の当たりにしてきた」のだから、正に「身内を失う」経験をした訳だ。
生態系への影響も重大だ。土地なし農民の定住地にも近いナオ・ショハンでは、川に棲む魚や川岸にいたカピヴァラなどの動物が姿を消したのを毎日の生活の中で痛感している。
パラオペバ川の魚は、事故当日から影響を受け始めた。当日のサイト記事によると、水深は所によって2メートルも変わり、腹を見せて浮いた魚が延々と続く様子が遠くからも見えたという。
鉱滓で汚れ、金属などでも汚染された水は灌漑用水にも使えないため、鉱滓の直撃を免れた農家でも、田畑や家畜の維持が難しくなり、生きる術を失った人が多い。
Vale社によると、9日までに確認された生存動物や死んだ動物は計1万5210頭(匹)。鉱滓の中から助け出された動物は家畜やペットが大半で、野生動物までを含むが、野生動物40頭中、5頭はその後、死んでしまったという。
州森林院(IEF)のアントニオ・マラルド院長によると、地上に生息している動物が事故のせいで絶滅した例はない。だが、水生動物に関しては現在もまだ調査中だ。
同院長によると、鉱滓ダムからパラオペバ川までの鉱滓で覆われた場所の面積は290ヘクタールに上る。鉱滓除去は消防の協力も得て進められているが、Vale社によると、地表に残った鉱滓600~700万立方メートルの内、半年間で除去出来たのは75万立方メートルのみだ。
ただ、いくら鉱滓を除去しても、金属汚染なども起きた土地での農作は無理と考える農家が大半で、事故で死傷者が出ていない農家であっても、負債の返済や生活保障は重大な問題だ。
IEFは、同地区の環境が事故前の状態に戻るかや回復に要する時間を推測するのは難しいという。州水質管理研究所も「川の回復は信じているが、どの位の時間がかかるかは不明だ」という。ただ、流域全体の基礎衛生事業が進めば、事故前の水質以上に改善される事も信じているという。