【既報関連】1日付連邦官報に、軍政中の政治犯の死亡や失踪に関する調査特別委員会のメンバー交代が告示されたと同日付現地紙サイトが報じた。
特別委員会のメンバー交代は、ボルソナロ大統領とダマレス・アウヴェス女性家庭人権相の連名で発表された。
大統領によると、メンバー交代は大統領が交代したからで、「テロリスト達がいた間は皆が黙っていた。大統領が代わったのだから、同件も、環境問題に関する論議も変わる」としている。
同特別委員会は7月24日、ブラジル弁護士会(OAB)のフェリッペ・サンタクルース会長の父親フェルナンド・アウグスト・デ・サンタクルース・オリヴェイラ氏は、「軍政下で行われた迫害により、1974年2月に死亡」とする死亡証明書を発行した。
だが、ボルソナロ大統領は7月29日に、「OAB会長の父親の死の真相を教えてやる」と前置き後、「オリヴェイラ氏は軍によってではなく、彼を信用出来なくなった左派の反体制派によって粛清された」と語る、生中継ビデオを流した。
オリヴェイラ氏は、カトリック総合大学在学中に反体制派の大衆運動(AP)に参加。連邦政府発行の書物『記憶と真実への権利』によると、同氏はAPの仲間のエドゥアルド・コリエル・フィーリョ氏と共に、74年2月にリオ市コパカバーナで陸軍秘密警察に捕まり、消息を絶った。
他方、旧海軍省が1993年に作った文書や、7月29日に公開された1978年9月18日付の旧空軍省の文書にも、74年2月に逮捕との記載があり、APによる殺害説には無理がある。連邦検察庁も7月31日、オリヴェイラ氏ら12人の遺体はリオ州の製糖工場で焼却されたとの捜査結果を再公表した。
だが、大統領は7月30日も、「調査特別委員会や真相究明委員会の文書はまやかし」との趣旨の発言を行い、自分の論は正当だと釈明した。
このようなやり取りの中で発表されたのが、委員長のエウジェニア・アウグスタ・ゴンザガ氏の代わりに、ダマレス氏側近のマルコ・ヴィニシウス・ペレイラ・デ・カルヴァーリョ氏など、7人中4人の委員の交代だ。
1995年創設の特別委員会は、1961年~79年に反体制派の政治犯として扱われて消息を絶った人々の足取りの調査や認証活動を続けている。エウジェニア・ゴンザガ氏は7月29日の大統領発言を、「遺族の心痛を思うと非常に深刻」と批判していた。
サンタクルースOAB会長も発言当日、大統領の態度は「残酷で一片の共感性もない」と批判した。また、7月31日には、大統領が知っている事を話させるための質問状を最高裁に提出。同件はルイス・バローゾ判事が扱う事になっている。