サンタクルス病院(HSC、石川レナト理事長)の創立80周年記念事業の一環として、7月30日から8月1日まで3日間、九州大学と大阪大学から5人の教授が来伯し、31日午後に「第5回日伯医療協力セミナー」で同病院の医師らと共に講演、午前には「第3回日系病院連携協議会」にも参加した。前日の30日夜にはジャパン・ハウス(JH)で在聖日本国総領事館(野口泰総領事)、同病院、アジア遠隔医療開発センター(TEMDEC)が共催した「『本当の和食』の普及を通じたブラジルにおける健康寿命の増進」と題した講演会に登壇。124人が来場し立見客も出るなど、当地の和食や健康に対する関心の高さを伺わせた。
来伯したのは、九州大学病院国際医療部の清水周次教授、森山智彦准教授、同大学栄養管理部栄養管理室の花田浩和室長、大阪大学医学系研究科の南谷かおり特任准教授、山崎慶太特任准教授。それぞれ栄養学や日本の医療現場について講演した。
JHでは、食文化大使の役割も担った花田室長とサンタクルス病院の西国幸四郎医師が講演。同大学は5月中旬から1カ月間、国際協力機構(JICA)の「病院食」研修で、日系病院等から栄養士7人の受け入れを行った。その研修報告も含め、花田室長が「日本の風土と食事の成り立ち」をテーマに講演。西国医師が医学的知見から和食を健康食として解説した。
花田室長は、訪日研修生7人に自由に料理を作らせたところ、「全てに塩が入っていて、1品ずつ完成した味付け。野菜や果物が少ない」と指摘。西国医師も「日本の肥満が4%以下に対し、ブラジルは54%が肥満で18%しか正しい栄養が取れてない」とブラジルの健康問題を述べる。
この原因について、花田室長は「日本は災害に対応し、限られた土地で工夫して野菜を作ってきた。反対にブラジルは食材が豊富で、工夫しなくても野菜も果物も採れる。だから食べ物に対する意識が低くなったのでは」と持論を述べた。
さらに和食は「うま味、甘み、塩分のバランスが大切」だとし、白米に様々な味の副食というバランスが重要だと説く。和食に大切な出汁に関しては「鰹や昆布など日本のものがない場合、その地域で入手しやすいもので代用して問題ない。ブラジルの和食を作れば良い」と語った。
反響は大きく、終了後も質問等で人が押し寄せた。講演中も「出汁には味の素を使ってもいいのか」「ドライフルーツをどう考えるか」などの質問が飛び交い、清水教授は「皆健康に関心があることが伺えた」との印象を述べた。
翌31日午後の「第5回日伯医療協力セミナー」では、清水教授と森山准教授がTEMDECの遠隔医療教育、南谷特任准教授と山崎特任准教授が病院内の国際診療科の役割や医療通訳養成コースについて講演し、日本の医療現場の動向を共有した。
□関連コラム□大耳小耳
JH、サンタクルス病院で講演を行った九州大学栄養管理部栄養管理室の花田浩和室長が、JICA研修で訪日した栄養士7人に料理を作らせたところ、「ご飯を油、塩、にんにくで味付けし、フェジョン代わりに小豆やうずら豆を使っていた。主食であるこれらにドバっと塩を入れ、他のおかずにも入れてるから全てが塩辛い」との感想を抱いたとか。ご飯をただの白米にするだけで、塩分を大分控えられるとのこと。身に覚えがある人は試してみては?
◎
大阪大学医学系研究科の南谷かおり特任准教授は、りんくう総合医療センター国際診療科部長も務める。実は11歳からブラジルで過ごし、エスピリト・サント連邦大医学部を卒業、日伯両方の医師免許を取得している。ポ語、スペイン語、英語を話すことができ、医療通訳現場で活躍しているのだとか。日本では外国人が増えており、医療通訳の充実は急務。南谷特任准教授のような存在は、今後も重宝されそう。