ブラジルと共同経営のイタイプダムの電力を巡る不可解な契約が原因で、ベニテス大統領罷免が叫ばれるなど、パラグアイ国内が揺れている。また、契約の席についたブラジル企業の背後にボルソナロ大統領の社会民主党(PSL)の政治家がいることも報じられ、不正な恩恵を受けた疑惑も浮上している。1~2日付エスタード紙などが報じている。
このスキャンダルの発端は、ブラジルとパラグアイとの間で5月に結ばれたイタイプダムの電力使用契約だ。パラグアイ側は例年、どの位の電力を使うかを申告して合意書を作成。申告した量を超えた場合、同ダムの水量が多い時期に発生する余剰電力を購入していた。
この場合、最初の申告分電力はダム建設時の負債返済分を含めた電力料金(昨年は1メガワット時あたり43・8ドル)が設定されるが、余剰電力は、それよりはるかに安い1メガワット時当たり6ドルを払っていた。
だが、19~22年の合意では、同国の公社、全国電力管理会社(ANDE)が余剰電力を購入する場合は企業などの仲介者を入れずに交渉できるようになるはずだったが、この項目が合意寸前に削除され、ブラジルの政治家と繋がりがあるLeros社がブラジル向けの余剰電力の売買を独占することになったという。
同ダムの電力は85%をブラジルが使用し、パラグアイは15%だけ。それは両国の経済力の規模などに由来するものだ。余剰電力の購入は、2007年のルーラ政権時代に一度話し合われたが、ウゴ大統領の罷免で正式合意に達していなかった。
だが、5月の合意時にベニテス大統領と、ブラジルとの交渉の席についたウゴ・ヴェラスケス副大統領が余剰電力の自由交渉を促す項目を削除させたため、パラグアイ側は年間13億レアルの損失を被ることとなった。
これを知ったANDE総裁が辞任し、合意内容を暴露したため、国民は「電気代高騰」と大騒ぎになり、外相らも辞任。ベニテス大統領とヴェラスケス副大統領の罷免を求める世論が起きた。
このため、1日に両国間の合意破棄が確認されたが、その後、議会調査委員会が設置され、正副大統領らの関与の度合いなどを追及する動きが起こり、罷免への動きが活発化している。
5月の合意で余剰電力の販売権を得たLeros社代表として交渉の席についたのはPSLのアレッシャンドレ・ジョルダーノ氏だ。同氏は上院政府リーダーのマジョール・オリンピオ上議の補欠で、両国の交渉の席にもボルソナロ大統領の名を借りて参加した。
パラグアイの議会調査委員会は、正副大統領の責任と共に、Leros社がブラジル市場に300メガワットの電力転売を独占的に行う権利を求めていた疑惑や同社が受けたと思われる恩恵についても追求を行う意向だ。