DOPSへの根来氏の証言によると、会員数は2万人、支部が51あり、これには根来良太郎のアララクァーラ支部も入っている。渡真利氏はそれ以上の数を提出している。会員3万人、支部は64。これら支部はサンパウロ州全域に散らばっている。支部が一番集中しているのはマリリアとツッパンで、次にポンペイア。この三ヵ所だけで、臣道聯盟の会員は3万2000、会員の家族を合わせると10万4250人。それに親類縁者を入れると13万人にのぼる。
つまり、移民が始まった1908年から、禁止された1941年までに入国した移民の四分の三の日本人が臣道聯盟の傘下にあったということになる。この場合、会の意向に賛同しても会員になっていない者は数に入れていない。サンパウロ州に住む日本人だけにしぼると、80%、いや90%に近い移民が臣道聯盟に属していたことになる。
臣道聯盟の指導者たちが最も活発な時期をむかえたのは、1945年8月14日に終戦のニュースが入ってからだ。日本敗戦の情報が流れるや(それは渡真利成一を動揺させ、彼は獄中の吉川に助言を求めに走った)、ボスケ・ダ・サウーデ区パラカツ街82、96番の2軒に設けられた組織本部で、勝利をでっち上げる工作を開始し、それは次の月までつづいた。
日本語による出版物の配布禁止、ほとんどの移民がポルトガル語の新聞や雑誌が読めないことが偽の情報をながす組織には有利だった。9月10日、占領軍により、国営放送局が閉ざされ、放送が止まった。海外の邦人社会は日本の公式情報が得られなくなった。そのため、ブラジルでは臣道聯盟が偽のニュースを流したり日本の勝利を裏づけるような偽造写真を配布したりすることを容易にした。
このような記事を見て、正輝はますます日本の勝利を確信した。『確固たる写真』だと組織が配布した戦艦ミズーリの船上の写真には、日本軍人は剣を腰にし、アメリカの軍人の腰には剣がなかった。勝利者が剣ももたず剣をたずさえた敗北者の前にたっているのはどういうことか?
他の偽造写真はアメリカの軍艦に日本の国旗が掲げられている。日本が勝った証拠だ。また、1945年9月16日のサントスの「トゥリブーナ新聞」からコピーされたと思われる写真に臣道聯盟は「戦艦ミズーリの船上における連合軍無条件降伏に際しての調印式の現場写真」と説明している。
正輝は臣道聯盟が伝える日本勝利の情報を多く目にした。記事のひとつに、「ブラジルはサルガード・フィーリョ大臣が15名の随行員を従え、日本に謝罪するためたった」、その上「ブラジル新聞」の9月15日の記事によると、戦艦尾張は30隻の戦艦とともにニューヨークに入港し、日本の使節団はワシントンに向った。また我国の軍使節団は9月25日、9時に到着予定で、アルゼンチン海軍の何隻かが随行している」、その他「マッカーサー元帥は戦犯として審判された」「連合軍責任者は無条件降伏に署名した」「沖縄のアメリカ軍による占領は連合軍による偽情報だ」などといった情報が流された。
降伏の条件は以下のとおりである。
1─4カ国からなる連合軍は今後、我国の膝下におかれる
2─世界は日本の統制下におかれる
3─アメリカ合衆国、英国、中国、ロシアの国の大統領や首相の選挙は日本の指示をあおぐ
4─日本は4カ国に戦争賠償金を要求する
5─インドとオーストラリアの独立を宣言する
6─ドイツ人戦犯は即座に解放する
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