ホーム | 日系社会ニュース | 夏休み=少年サッカーの遠征続々と=中沢スポーツ教育センターへ=世界水準知り、一皮むけて帰る

夏休み=少年サッカーの遠征続々と=中沢スポーツ教育センターへ=世界水準知り、一皮むけて帰る

クリアージュFCのメンバーら

 日本の夏休みを利用して、少年サッカークラブチーム「クリアージュFC」(クリアージュスポーツクラブ足立=五十嵐正代表、東京都)と「ZIONFC」(林洋平代表理事、東京都)の2団体が遠征で来伯した。両団体はサンパウロ州アチバイア市の中沢スポーツ教育センター(Centro Esportivo e Educacional Nakazawa=CEEN、中沢宏一代表)を拠点に、当地のクラブチームとの対戦などを行い、サッカー王国・ブラジルで研鑽を積む。7日に両団体に取材を行った。

 クリアージュFCは丸茂敦監督らスタッフ4人と14歳以下(中学2年生)のメンバー39人で来伯。7月20~8月9日の20日間滞在。当地チームとの対戦や交流、プロサッカーチームの試合観戦、コロニアのイベントにも参加した。
 丸茂監督(42、東京都)は4年間のブラジルサッカー留学経験があり「ブラジル人は本気のプレーの中で、挑発する一方、おどけてだます二面性がある」と特徴を説明。練習試合について「ブラジル人は日本の公式戦以上の真剣さで臨んでいた。あの熱量を感じ取ってほしい」と期待した。「チームのモットーは『応援される選手になる』。遠征も親の応援があってこそ。感謝を言葉にするのは簡単だが、子どもには行動で返せるようになってほしい」と目的を示した。
 主将の稲村青葉さんは「ブラジル人は身体能力が高く、演技で倒れて時間稼ぎをする狡猾さも合わせ持つと痛感した」との成果を語った。

ZIONFCのメンバーら

 一方、ZIONFCは佐藤翔監督らスタッフ3人と小学5、6年生のメンバー10人で7日に来伯。18日まで滞在し、コリンチャンスやパルメイラスの同年代のチームと練習試合を行う。
 佐藤監督は「今のサッカー界では、16、17歳で初めて国際大会に出て海外の選手と試合するようでは遅い。今の年齢で経験することが、今後の成長のために重要だ」と力強く述べた。
 スペインに遠征経験があるメンバーの土屋康誠さんは「ブラジルで通用するのか思い切ってぶつかっていきたい」、陶山瑠偉さんは「ブラジルはドリブラーが多い印象。ブラジルで世界水準を確認し、一皮むけて帰りたい」と意気込みを見せた。
 CEENは1993年に設立。2面グラウンドと約200人が宿泊できる寮の他、広大な敷地にはトレーニングルームやリハビリ用プールなども完備。当時、高校を中退して海外へサッカー留学をするケースが多く、後の社会復帰が日本で問題化。中沢さんはバラ栽培で事業を成功させ、「教育に携わりたい」との考えから所有地内にサッカーグラウンドや施設を整備していた。
 それを知った日本のサッカー関係者が、中沢さんに「高校を中退せず単位取得できるサッカー留学制度」をお願いし、日伯サッカー交流制度が開始された。第1期は日本文理大学付属高校(大分県)の生徒23人を1年間受け入れた。生徒は寮で生活し、サッカーを学びながら当地の提携高校に通学。帰国後に他の生徒と同様に進級した。
 第3期受け入れの矢板中央高校(栃木県)は、後に全国的な強豪校にまで成長。CEENではこれまで約1200人の青少年を受け入れている。現在は日本の夏休みにあたる7、8月にクラブチームの短期遠征の受け入れを行い、サンパウロ州2部リーグのSCアチバイアの拠点としても使用されている。

グラウンドの様子(CEEN提供)


□関連コラム□大耳小耳

 サッカークラブチーム、クリアージュFCのメンバーはブラジル遠征にあたり、スマートフォンを親の下に預けてくるようにした。丸茂敦監督は「ブラジルまで来て部屋にこもってスマホを見るのではなく、メンバー同士またはブラジル人と積極的に交流してほしい」と話した。さらに子どもに内緒でそれぞれの両親から直筆の手紙も書いてもらい、遠征中に手渡した。中には感動して涙ぐむ子どもも。子どもからも返事の手紙を書いたそうだが、普段はスマホの会員制交流サイト(SNS)でやりとりするため「手紙を書いたことがなく、どう書けば良いのか分からない」という声も。丸茂監督が手紙を見てみると、両親への感謝とともに「空港にスマホを持って来てね」、「帰ったら焼き肉と寿司が食べたい」との文言が。子どもが両親に感謝の念を抱いたのは事実だが、スマホと日本食の価値も痛感した?!
     ◎
 クリアージュFCのクラブチーム名は、ポ語のCRIAR(創造する)とJOVEM(若者)を合わせた造語。「自分で考えて行動できる、感性豊かな若者であってほしい」という願いが込められているとか。子どもの豊かな体験のためにも、こうした日伯を結ぶ取り組みが今後も盛んに行われることを願うばかりだ。