【既報関連】ブラジル連邦下院議会は14日、公職者による職権濫用を制限する法案を賛成多数で承認した。14、15日付現地各紙・サイトが報じている。
同法案では職権濫用罪が適用される対象を、地方公務員、連邦レベルの公務員、検事、判事、金融活動管理審議会(Coaf)などの金融活動の監査・規制機関の職員、軍関係者と定めている。
同法案は6月末に上院で承認済みで、14日夜の基本文書承認と修正動議の否決により、ボルソナロ大統領の裁可を待つのみとなった。
「職権濫用を防ぐと言えば聞こえがよいが、多分にラヴァ・ジャット(LJ)作戦などの汚職捜査により、“痛い目”に遭わされてきた政治家たちによる、検事や判事への反撃的要素を同法は含んでいる」と地元紙は分析している。
同法案では、これまでは捜査手法として認められてきた行為を犯罪行為としている。例えば、判事が、容疑者や証人に対し、任意の出頭要請を出す前にいきなり強制出頭命令を出すことは罪になる。また、収監されている人物や調査対象者を辱める目的で、同意なしに写真をとったり、ビデオを撮影したりすることも、捜査している側の罪となる。こうした罪を犯した人物は、失職するだけでなく、最大4年の禁固刑となる。
同法案は幅広く議会で支持され、反対姿勢を打ち出した政党は、社会自由党(PSL)、シダダニーア、Novo、緑の党(PV)だけだった。これらの反対派は、ロドリゴ・マイア議長(民主党・DEM)が、誰が賛成し、誰が反対したか分からないようにするために無記名投票とした際も、不満の声を出した。
検察や司法の力を削ぐ法案には当然、クリチーバのLJ特捜班やLJを強く支持する議員たちから反対の声が上がった。LJ支持議員たちは、判事時代に公平さを欠く態度があったと疑われているセルジオ・モロ現法相へのあてつけではないかと憤慨している。
しかし、法案賛成派は、「モロ法相にまつわる疑惑発覚があったからこそ、検察、司法の行き過ぎにストップをかける必要性が高まった」としている。
マイア議長も、「上院が承認した条文の対象は判事、検事だけだったが、下院を通った法案は公務員全般を対象にしており公平」としている。
ボルソナロ大統領の所属政党で、本会議では“敗者側”となったPSLの議員たちからは、「多くの犯罪捜査が打撃を受け、多くの汚職議員が生き延びてしまう」との声が上がり、大統領の支持基盤の一つである銃規制緩和推進議員団(bancada da bala)からは、部分的拒否権行使を求める動きも出ている。
ただし、下院の票をボルソナロ大統領に有利な方向にも、不利な方向にも、百票単位で動かせるセントロンは法案賛成派のため、大統領は難しい判断を迫られそうだ。