【既報関連】14日に連邦下院議会が職権乱用防止法をスピード承認してから一夜明けた15日、法案に反対した下院議員や、検察、司法当局、果ては政権内部のセルジオ・モロ法相までが、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)に対して法案の一部に拒否権を行使するようにと働きかけたと、16日付現地各紙が報じている。
同法案は、「ラヴァ・ジャット作戦による汚職捜査に対する政界からの反撃、報復」といった要素を多分に含んでおり、PT(労働者党)や民主党(DEM)など、本来は政治志向がまるで違う政党の議員が、こぞって賛成している。
「政治経験は豊富ではないが、その分、政界の垢にまみれていない」とのイメージを打ち出し、昨年の選挙で躍進したPSLなどは、党として法案に反対した。
法案に反対している銃規制緩和推進議員団は、既に二つの点で拒否権が行使されるだろうとの情報を得たとしている。
その二つとは「正当な根拠なしに捜査を行ってはならない」の項目と、「不適切な方法で手錠を使ってはならない」だ。
〃正当な根拠〃や〃不適切な方法〃も解釈の幅が広く、汚職や犯罪捜査対象となった容疑者の弁護側が「不当捜査」を訴える口実になる。
また、「調査対象者、収監者、被害者などをの写真や動画を、本人の同意なく撮影してはならない」の項目も拒否される可能性がある。
また、職権乱用防止法に含まれているが、拒否権行使を要望されていない項目として、「司法当局の正式な許可や現行法が認めるような条件が整わないのに、捜査目的と称し、居住者の同意もなく、住居や私有地に侵入することを禁じる」などもある。職権乱用防止法には、違反行為別に、失職、罰金から禁固刑までが想定されている。
拒否権行使の可能性について問われたボルソナロ大統領は15日、これからその可能性について考えるが、職権乱用が全くないわけではないと答えた。
PP(進歩党)、DEM(民主党)、PRB(ブラジル共和党)、連帯の4政党からなる20人の議員団は、20日に大統領と面会し、同件について話し合う予定だ。裁可期限は15日以内だ。
自身の推す犯罪防止法より先に、犯罪を取り締まる側の権限を抑制しかねない法案を通されてしまったセルジオ・モロ法相は、「誰だって職権乱用には賛成しない。しかし、職権乱用防止法により、検事や検察、判事の職務が脅かされないか、慎重に検討する必要がある」との書面を出した。
また、連邦検察庁も、「この法案は、捜査対象者、被告人たちに、捜査機関こそ罪を犯していると糾弾する権利を与えるもので、犯罪や汚職捜査の効力や各機関の独立性を損なわせる」と、より踏み込んだ声明を発表している。