【既報関連】ブラジルを中心に広がるアマゾンの熱帯雨林で、森林伐採や、伐採後の土地を農牧地として使えるようにするための焼畑などに起因する森林火災が急増し、世界中の目がブラジルに集まっている。
アマゾンの熱帯雨林は世界中のバイオマスの10%を有し、世界中の酸素の20%を産出する「世界の肺」だ。健康な樹木は大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を排出するため、大量の樹木を有すアマゾンはまさに、巨大な肺といえる。
だが、樹木の伐採や火災などが起こると、温室効果ガスである二酸化炭素が吸収されなくなる。このため、地球温暖化対策上、樹木喪失は温室効果ガスの排出量増加とみなされる。
他方、樹木が地中から吸い上げた水が蒸発して出来た蒸気の流れ(ポルトガル語では「飛ぶ川」と表現)は、ブラジル中西部、南東部、南部だけでなく、チリ南部からボリビア、パラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイにまで雨をもたらす。
葉張り(葉の端から端までの幅)が10メートルの木は1日300リットルの水を蒸気に換え、20メートルの木は1千リットルの水を放出するから、アマゾンの森林伐採は、南米全体の雨量や農業用の灌漑用水減少なども意味する。
昨年同期比で82%増えた森林火災について、ボルソナロ大統領は21日、「アマゾンの森林火災は、活動資金を打ち切られた環境団体が資金獲得のためにブラジル政府や欧米諸国の目を惹こうとして起こした犯罪行為の結果」とし、非政府団体に責任を転嫁した。
だが、アマゾンについて50年以上研究してきた米国の生物学者のトーマス・ラヴジョイ氏は、今回の森林火災急増は政府側の意向の変化で管理やコントロールが急激に失われた結果に他ならないと見ている。
ブラジル国内の法定アマゾンでの森林火災急増は、エルニーニョ現象で旱魃がひどかった1987年にも起き、ブラジル国内で発生した黒煙が広く南米に広がったが、その様な事態はそれ以降起きていなかったという。
また、2000年代最初の5年間は森林伐採も多かったが、2005~12年の森林伐採量は80%減っており、政府の取り組みいかんで、森林伐採や森林火災はコントロールできるという。
だが、政府の取り組みが弱体化し、森林伐採が擁護されれば、森林火災も当然増える。
トーマス氏は、2005、10、15/16年の旱魃を例に挙げ、アマゾンの森もサバンナのような乾燥地帯に変わりうると警告し、森林伐採の急増と森林火災の拡大に気候の変化が加わり、森が修復できなくなるターニングポイントを過ぎる事への強い懸念を表明。
19日に起きた、サンパウロ市での空の暗転と黒い雨は、アマゾンの熱帯雨林で起きている誤った開発行為への警告で、持続可能な開発のあり方を模索し、アマゾンの森を守るようにとの自然からのメッセージに違いないとしている。(22日付G1サイト、23日付エスタード紙などより)
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