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《ブラジル》社会保障制度改革=ジェレイサッチ上議が意見書提出=独断で歳出削減効果を縮小=「最終的には1兆レアル削減」と主張

ジェレイサッチ報告官(右)とアルコルンブレ議長(Marcelo Camargo/Ag. Brasil)

 【既報関連】社会保障制度改革に関する憲法改正案(PEC)の上院報告官、タッソ・ジェレイサッチ上議(民主社会党・PSDB)が27日、同案に関する意見書をダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)に提出したと、28日付現地各紙が報じている。
 先週中の提出予定を週明けに遅らせた報告書では、下院で承認された内容に二つの変更が加えられていた。
 一つ目は低所得の高齢者や身障者などへの特別恩給(BPC)に関するもので、もう一つは、危険な環境下で働く労働者の年金条件に関するものだ。
 二つとも、下院を通った案では、受給条件を厳しくし、受給額を少なくする、結果として政府の歳出を減らす内容だったが、ジェレイサッチ上議が行った変更は、歳出削減規模を縮小させ、政府の歳出を増やすものだ。
 ブラジル紙は、「下院を通った案では10年で9330億レアルの歳出削減だったはずが、ジェレイサッチ上議提出の報告書通りに、BPC関連と危険な環境下で働く労働者の年金受給条件の変更が認められれば、3削減効果が10億レアル分減少する。他の提案も通れば、さらに670億レアルの削減効果減少も」と分析している。
 ジェレイサッチ上議は、報告書には歳入増となる内容も含まれており、書かれた内容が承認されれば、1550億レアルの歳入増となり、削減効果の縮小も十分に埋め合わせできるとしているが、政府はこの報告書による変更を快く思っていないようだ。
 同上議は地方公務員の年金改革にも前向きで、これが成立すれば、全州と全市の合計で、3500億レアルの歳出削減となる見込みだ。ただし、地方公務員の年金改革は上院が並行して作成しているPECで取り扱われる。
 上院憲政委員会(CCJ)のシモーネ・タベ委員長(民主運動・MDB)は、「変更は、私の意思でも、アルコルンブレ議長の意思でもない、報告官のジェレイサッチ上議だけの意思によるものだ」と強調した。
 ジェレイサッチ上議は、「『10年で9330億レアルの歳出削減』とした下院案から見ると削減効果は縮小するが、歳入を増やす変更も組み込まれており、結局は10年で9900億レアル、ほぼ1兆レアル分の削減効果」と主張している。だが、そのためには、現在上院で進めているPECの他に、上院発、下院で完結する別のPECが必要だ。
 社会保障制度改革に関するPEC成立のためには上院の定数81の6割、49票以上の賛成が2回必要だが、アルコルンブレ上院議長は、10月10日までに、2回の採決を終えられるだろうとしている。
 また、歳出削減効果を補強する別のPECは年末までに上院で承認し、その後下院での承認手続きに進む予定だ。