ブラジル将棋連盟(吉田国夫会長)とニッケイ新聞(高木ラウル社長)が24日に「第2回こども名人戦」を、25日には「第72回全伯名人戦」をサンパウロ市の文協ビルにて開催した。後者では、ミナス州ベロ・オリゾンテ在住の浜公志郎さん(30、二世)が6年振り7度目の優勝を果たし、第七十二代全伯名人となった。今大会には日本から青野照市九段、北尾まどか女流二段に加え、小針俊郎将棋連盟東京都支部連合会長が参加。無料指導対局などが行われ、在伯愛棋家らにとっては貴重な機会となった。
24日に行われたこども名人戦では、鎌田ジュリアナさんのチェス教室に通う子どもたちを中心に約65人が参加。どうぶつ将棋と将棋部門、さらに年代別に分かれて対戦を行った。将棋部門10歳以上の部で優勝したギリェルメ・ユキオ・コクマイ君が、第二代ブラジルこども名人となった。大会後には北尾女流により、子どもや保護者に向けた講演も行われた。午後はこども団体戦や、北尾女流が4人の子どもと同時にどうぶつ将棋で対局する機会も設けられた。
25日の全伯名人戦には全伯から30人が参加。激戦を勝ち抜いてパラー州ベレン在住の高野勇治さんと浜さんが決勝の舞台へ。会場内を仕切り、特別に青野九段が大盤による決勝戦の解説を行った。戦型は高野さんが振り飛車、浜さんが居飛車の対向形。浜さんが穴熊囲いを目指した隙に高野さんが果敢に攻め入ったが、形勢は浜さん有利に。丁寧に攻めを受け切った浜さんの勝利となった。
この2日間には在伯日本国大使館から愛棋家の真鍋尚志経済公使や下本八郎元サンパウロ州議、池崎博文リベルダーデ文化福祉協会会長、林まどか文協副会長らも慶祝に訪れた。また、昨年に続いて大会協賛のC-ENG社社長・高岡伸行氏も来伯。優勝者には同社が日本将棋連盟にも提供している座布団の副賞が授与された。
大会後、青野九段は「ブラジルの将棋は歴史と伝統があり、レベルも高い。将棋に対する熱気が強く伝わる」と語った。北尾女流も「多くの子どもたちが将棋やどうぶつ将棋を楽しんでいて驚いた。また来たい」と意気込んでいた。小針東京支部連合会長からは「ブラジルのこども達を日本で受け入れる体制を整え、将棋の普及と日伯交流を深めたい」と話すなど、当地での普及や発展に大きく寄与した大会となった。
各部門の優勝者、入賞者は以下の通り。
★《こども将棋優勝者》
【13、14才】ギリェルメ・ユキオ・コクマイ【11、12才】ヤン・ディミトリ・クルジスキ【9、10才】亀井優【8才以下】亀井将
《どうぶつ将棋優勝者》
【11才】エンリケ・ゴミエロ・アシス【10才男子】ルーカス・ジュン山下【同女子】レナタ・スパル・マルチンス【9才男子】ラファエル・ロペス・デ・アルメイダ【同女子】ラファエラ・タッシ【8才男子】マテウス・レモス・デ・オリベイラ【同女子】ガブリエラ・フェルナンデス・マルチンス【7才男子】ロレンソ・デ・ラキラ・ジョルジ【同女子】ナタリア・ミトザコフ・ソレンティノ【6才男子】ブルーノ・オクマ
★《名人戦》〔1位〕浜公志郎〔2位〕高野勇治〔3位〕吉田国夫【5段戦】〔1位〕村松宏〔2位〕ニコラス・ジュン・鎌田・デ・トレド〔3位〕浜井幹夫【3、4段戦】〔1位〕立岩清〔2位〕山本芳彦〔3位〕山口栄一【初、2段戦】〔1位〕藤原慎哉〔2位〕大西憲次〔3位〕ルシアーノ・コレイア
□関連コラム□大耳小耳
青野九段と北尾女流二段は2日間の大会の間、希望者への指導対局や多面指しでの対戦を休みなく行っていた。この日初めて将棋を指すというリラ・ディセタノさん(23、グァルーリョス市在住)も北尾女流に挑戦。10枚落ち(王と歩のみ)のハンデで見事勝利。北尾女流は、この日初めての敗戦となったとか。
◎
北尾女流二段が24日に行った講演内容は、「将棋をすると3つの良いことがある」というもの。1つは頭が良くなること。上海では学校で将棋の授業を取り入れ、成績が上ったというデータが出ているという。2つ目は考える力がつくこと。先を読み、筋道を立てて考えられるようになる。3つ目は負けた悔しさが「次頑張ろう」と先へ繋がることだという。将棋は教育にぴったり!
◎
北尾女流二段は「どうぶつ将棋」の考案者であるが、青野九段も実は「9マス将棋」の考案者。3×3の9マスに8種類の駒を使って対戦するミニ将棋。難易度の低いものからプロもお手上げの高難易度まで楽しめるそう。これから将棋を始めたい人や駒の動かし方を覚えたばかりの人にはオススメか。