アマゾン日本人移住90周年をサンパウロ市でも祝し、慶祝の想いを届けたい――トメアスー日本人移住90周年記念祭典実行委員会(柴田シルヴィオ一宇実行委員長)は、同地90周年記念チャリティーディナーショー(企画・構成・演出=藤瀬圭子プロダクション)を9日夜、サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会ビル内多目的サロンで華々しく開催した。コロニア歌手が歌謡ショーを繰り広げ、サンパウロ市で日本食とアマゾン料理のレストラン「ラーメン・アスー」を営む深山ナンシーさんが豪華アマゾン料理を提供し、来場した約400人は歌謡ショーと晩さんで楽しい一時を過ごした。
この協賛イベントは、アマゾン最初の移住地トメアスーの移住90周年祝賀に向け、サンパウロ市からも応援を送ろうと藤瀬さんが企画した。藤瀬さん、深山さん、出演したコロニア歌手は無償で協力し、収益はトメアスー文化農業振興協会(ACTA)に寄付された。
現地から第1回アマゾン移民の山田元さん、柴田実行委員長、稲田アリソン明信(あきとし)さん、林建佑さんら8人が来聖。在聖日本国総領事館の野口泰総領事、石川レナト文協会長、ブラジル日本都道府県人会連合会の山田康夫会長ら来賓もステージに上がり、祝典が始まった。
まず柴田委員長は「今日はサンパウロ市の友人や親戚とアマゾン入植を祝う特別な機会です。このように盛り上げ、協力してくださることに感謝します」と謝辞を述べた。
移民船から見える富士山の雄大な姿を歌った成世昌平(なるせ しょうへい)の『みかえり富士』を鈴木健治さんが朗々と歌い上げ、歌謡ショーは幕を開けた。
藤瀬圭子さん、高畑正二さんの名コンビによる司会で、一曲一曲の時代背景、歌に込められた思いを語り、ステージを盛り上げた。高畑さんは山田元さんリクエストの『別れの一本杉』を歌唱。山田さん本人もマイクを受け取り、高らかに歌声を響かせた。
西谷エジナさんは夫への思いから作った楽曲『もう一度あなたに会いたい』を日ポ両語織り交ぜて歌い、谷川セルジオさんは『北の酒場』など3曲を勢いよくメドレーで、現地から来た中瀬マルセロさんも、パラー郷土音楽を陽気に歌い、会場を盛り上げた。
華やかな和服に身を包み登場した松永クラリッセさんは、情緒豊かに『花嫁人形』を歌い、後のステージでは衣装を変え繊麗なバレエも舞い、観衆を魅了した。片岡ゆりさんは『かあさんの歌』を披露。母の苦労と子への惜しみない愛情をしっとりと聴かせた。
日本開催の歌謡大会で受賞経験も持つ中島幸夫さんは『白雲の城』を堂々歌い上げ、清水カリーナさんは『この…駅で』に込められた切なくも情熱的な愛を切々と歌った。
フィナーレには平田ジョエさんが登場。出演者、来賓も再び登壇し、野口総領事と2人で『乾杯』を熱唱。ステージも会場も一体となって腕を振り、大歓声と拍手喝采が響きわたる中、終演を迎えた。
ショーの間、来場者の目の前には、深山さんが腕によりをかけた珍しいアマゾン料理が次々に運ばれた。「アマゾンのフェイジョアーダ」ともたとえられる「マニソバ」。キャッサバのデンプンをゼリー状にしてエビを加え、ジャンブー、トゥクピーのアクセントをほのかに効かせたスープ「タカカ」。さらに飲み物にもクプアスーなど同地名物果実ジュースを用意。日本人、ブラジル人の好みに合わせ、アマゾンの豊富な食材を生かした極上の品々に、来場者は美食を堪能した。
山田元さんは「トメアスーがピメンタで栄えた時は、サンパウロ市から品物を買って助けたこともあった。今も友人や親戚がサンパウロ市におり、お互いに支え合っている。サンパウロ市は遠いが絆でつながっているのだと感動を覚えた」としみじみ語った。