「ボルソナロ政権が映画の検閲を開始か?」―。そうした憶測はすでに数カ月前から起こっていたが、「それが現実になるか」と思われる出来事が起こった。
12日、映画配給会社のO2フィルムズは、同社が11月20日から公開する予定だった映画「マリゲーラ」の公開が無期延期になったと発表した。
同社によると、それは同社が映画公社「アンシネ」に求めた「音声映像部門基金(FSA)」の許可が下りなかったためだという。
その影には、ボルソナロ大統領の映画表現に関する圧力があると見られている。大統領は7月頃から、「アンシネ廃止の可能性」や「アンシネの財政の締めつけ」などに関して発言しており、今月11日には、2020年からのFSAの予算を43%カットすると言う内容を含む法案を議会に提出している。
「マリゲーラ」は、軍事政権時代に左翼ゲリラとして知られていた実在の人物の伝記映画で、世界的に有名な俳優、ヴァギネル・モウラの監督第1作目。今年3月のベルリン映画祭に出展され、好評も得ていたことで、公開が期待されていた。
だが、陸軍出身で極度の左翼嫌いとして知られるボルソナロ氏が反対をしないかも、かねてから注目されていた。公開無期延期が決まった後、大統領次男のカルロス氏がこの結果を喜ぶツイートを流してもいる。
また、ウルグアイでは、10月から同国ではじまる「ブラジル映画祭」で、ドキュメンタリー映画「シコ:アルチスタ・ブラジレイロ」が、公開危機に陥っていたことがわかった。
これは、ブラジルの軍事政権時代の反体制派のヒーローのひとりで、現在はブラジル音楽界や文学界、そして左翼に強い影響力を持つ、歌手で作家のシコ・ブアルキのドキュメンタリー映画だ。
「オ・グローボ」紙の報道によると、主催のJBMプロダクションが、「モンテビデオのブラジル大使館により、この映画に関する検閲が行われた」という通知を、この作品を監督したミゲル・ファリア・ジュニオル氏に送っていたことが明らかになったという。
結局、JBMプロダクションは検閲行為を押し切って、この映画を公開することを決めている。(12日付フォーリャ紙サイト、13日付オ・グローボ紙サイトより)