9月17日で任期切れとなるブラジルの連邦検察庁特捜局(PGR)のラケル・ドッジ長官が12日、連邦検察庁(MPF)代表者としては最後の最高裁審理に参加したと、12、13日付現地各紙・サイトが報じた。
トフォリ最高裁長官やその他の判事たちはドッジ長官を歓迎し、審理の冒頭で彼女の功績を称えた。「ドッジ長官は法的秩序と憲法を守り、人々の権利の実現を促進するという高貴な職務に、信念と勇気をもってあたった」「強力かつ独立した検察抜きでは、権利や自由の擁護は出来ず、汚職と戦うことも不可能だ」と、トフォリ最高裁長官は語った。人々の権利という言葉には、表現の自由などが含まれている。
また、検察庁出身で、最高裁では最も経歴の長いセルソ・デ・メロ判事も、ドッジ長官の仕事ぶりを賞賛し、検察の独立性を支持。「検察は特定の人物にも、特定のイデオロギーをもった組織にも仕えないし、政党の支配下にも置かれない。また、ブラジル連邦共和国のヒエラルキーの中で、いかに強力な権力者にも、おもねることはない」と語った。
ドッジ長官は返礼として、「在職中は汚職や腐敗と戦い、女性や先住民、少数民族の権利、環境保護のためにも戦ってきた」と述べた。また、検察の独立性を擁護し、最高裁の業績も賞賛した。「ブラジルだけでなく、世界中で、法の支配、基本的な人権の尊重、全ての世代にとって健康的な環境の保護などに対抗する声が上がっている。このような状況下、検察の責任は極めて重要だが、過剰な動きに歯止めをかけ、常に憲法の定める原則に則って法律が運用され続けるために、最高裁が負う責任もまた重要」と語った。
ドッジ長官は、大型汚職摘発捜査のラヴァ・ジャット作戦(LJ)にも触れ、「汚職と戦う検察官たちにはサポートを惜しまなかった。クリチーバ、サンパウロ、リオのLJ特捜班の人員も増やしたし、予算もつけた」と語った。
ドッジ長官は、最高裁審理の後、記者団にも口を開いた。「21世紀における人類の大きな課題は、民主主義を殺さないことだと思っている。民主主義は発展もするが、後退もする。世界情勢において、自由民主主義後退の兆候を感じ取っている。ブラジルではそんなことは起きて欲しくない」と記者たちに語った。
ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は5日、ドッジ氏の後任として、アウグスト・アラス連邦検察庁副長官を指名した。同氏は上院憲政委員会で試問を受け、同委員会と上院本会議で承認される必要がある。同氏の試問は9月25日に予定されており、ドッジ長官の退任から新長官の就任までの空白期間は、連邦検察庁上級審議会(CSMPF)副議長のアウシデス・マルチンスPGR副長官が暫定的にPGR長官を務める。