サンパウロ市内には現在、約3万人のバイクもしくは自転車配達人がいるとされている。彼らは皆、UberEats、Rappi、iFoodなどのスマホアプリでお手軽に食事を頼めるサービスの登録配達人だ。
その中の1人、サムエル・マルケスさんは毎朝9時に大きな保温ボックスを背負い、自転車で家を出て、市内のオフィス街に向かう。1日12時間働いても稼ぎは50レアル程度にしかならない。タイヤがパンクしても、修理費などは誰ももってくれず、自腹だ。
「1年前に始めてから、最後に休んだのはいつかも思い出せない。家でテレビを見ていても、こんな暇があったら少しでも稼がなきゃって気になる」と語る。こうした配達人は、1年前はそれほど多くなかったが、今では彼らが道路を走る姿は、街の中心地の昼食時、夕食時ではありふれた光景だ。
調査によると、配達人の75%は18~27歳だという。彼らは1日に12時間働き、平均月給は936レアル。1日平均10回の配達を行い、1回あたりの平均報酬は約5レアルだ。
「配達人を酷使しすぎ」との批判に対する後ろめたさからか、iFoodだけが、調査に書面で返答した。そこには、「弊社の“ビジネスパートナー”の大部分は、2日以上連続では働かず、1日の平均労働時間は8時間で、1日平均10キロ走行する」と書かれていた。
こうしたサービス提供企業は、「働き手とサービスを求める人をマッチングしているだけ」との体裁をとり、配達人との雇用関係を否定している。
こうした配達人たちの組合、アリアンサ・バイクの幹事長ダニエル・グト氏は、「配達人が1社にだけ登録しているならそれもありえるが、配達人は複数の会社に登録している」と実情との違いを語る。
グト氏は、注文が殺到する時間と、そうでないときの差が激しく、また、注文が入りやすい場所で待っていなくてはいけないので、家にも帰れず、無為に時間をつぶさなくてはならないのが配達人の悩みと語る。
ブラジル地理統計院の調べによると、配達人の75%を占める18~27歳までの世代は最も職不足に苦しめられている。これらの世代の失業者は実数515万人で、同世代限定の失業率は22・5%。この数字は、経済活動に従事できるはずの人口全体の平均失業率を10・5%ポイント上回っている。(15日エスタード紙より)
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