【既報関連】8月16日に1ドル=4・01レアルで取引を終えて以来、1カ月以上にわたって1ドル=4レアル超の水準が続いている。そんな中、21日付ブラジル紙が、ドル高に伴う現状の分析と予想される影響を掲載した。
20日の為替市場は1ドル=4・15レアルで取引を終えた。これは20日だけで見れば前日終値比0・22%のドル安だが、今年全体で見れば、7・29%のドル高だ。
通常、レアル安の時は輸出が有利だとされているが、経済の専門家は、「今のレアル安は、実体経済よりも投機的な要因で動いており、輸出業者への利点は少ない」と見ている。また、レアル安は、輸入品を中心に物価上昇を引き起こす。だが、内需が不調の今は、業者もすぐには為替要因を価格に転嫁させにくいだろうと専門家は見ている。
市場関係者は理想的な相場は1ドル=3・6~3・8レアル程度と見ているが、そうなるのは、社会保障制度改革が成功し、ブラジルの抱える負債が解消し始めた後との見方もある。
また、先週、ブラジル中銀が経済基本金利(Selic)を最低値更新となる年利5・5%に下げたことで、国際投資家がブラジルから資金を引き上げ、メキシコや南アフリカなど、他の新興諸国に移した可能性もある。
また、米中貿易戦争やサウジ石油危機に代表される、世界経済の不安定化も、ブラジルのようなリスクの大きい国からリスクの少ない国へ資本が流れた要因と見られる。
輸入部品にかかる経費が製造コストの6割を占める電気製品業界も、ドル高の影響を受けている。ブラジル電気電子工業会(Abinee)のウンベルト・バルバート会長は、7月から8月にかけて、「コスト増の影響を受けている」と表明した企業の数が50%増えたとした。
しかし、同会長は、需要が少ないことと、各社はまだ部品のストックが3~4カ月分あることを挙げ、販売価格上昇にはすぐにはつながらないだろうとした。
ブラジル人の国外旅行客に痛手
両替商で現金のドルを購入する場合、観光ドルの相場が使われる。観光ドルは、買う時は商業ドルより高く、売る時も商業ドルより安い。これは両替手数料がとられるためだ。観光ドルの20日の終値は1ドル=4・38レアルに達したことから、ブラジル人の国外旅行の日程や規模も変更を余儀なくされているという。
10月に米国ディズニー旅行の予定がある弁護士の女性は、「社会保障制度改革が進めば、ドルが下がるんじゃないかと待っているけど、一向に下がらない」と語る。
また、26日に米国に観光旅行に行く女子学生も、「1ドルが3・74レアルで買えた時期に『下がるのを待とう』と買わなかった。出発が近づいて買わざるを得なくなったけど、ドルの高さにがっかり」と語っている。
なお、週明け23日のドル相場は、午後5時の時点で1ドル=4・17レアル(商業ドル相場)だった。