このところ利用頻度が増したものの一つに、統一医療保健システム(SUS)がある。公立病院や保健所(UBS)他、私立の医療機関も一部が対応しており、診察や検査、予防接種、一定範囲の医薬品、検査、大人用のオムツなども無料で利用できる▼国や州、市の負担は大きいが、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の薬や鎮痛剤などはUBSで受け取れる。臓器移植後の人に不可欠な免疫能力抑制薬や骨粗しょう症治療薬、特殊なタイプの粉ミルクなど、個人では購入し難い品も高額治療薬を扱う医療機関で手に入る。血液や尿、磁気共鳴画像(MRI)などの検査、入院が必要な手術にも対応してくれる。日本での出稼ぎ中に脳梗塞を起こし、稼いだ金を使い果たして帰国した人を診た医師にも会った。私立病院にはかかれない庶民には強い味方だ▼ただ、診察や検査の予約を入れるのに時間がかかり過ぎる難点がある。特殊診療科の診察予約を入れるのに数カ月~1年以上かかった例や、超音波検査を受けるよう言われたが、出産予定日後しか空きがなく、私立の検査機関に走った妊婦もいる。指定された医療機関が遠く、朝5時台に家を出て検査を受けるのもザラ▼サンパウロ市でのはしか(麻疹)流行で、予防接種や診察を希望する人で医療機関が満杯となり、受付を通るのに1時間以上とか、擬似症患者の採血に看護婦の手がとられ、他の検査が後回しになる例も。保健局の報告で患者の増加率が下がり始めたと知り、救急病院で聞くと、「麻疹で来る人は減り始めた」というが、受付までは30分以上。こんなところにも庶民の生活実態がにじみ出る。税金から莫大な選挙資金を捻出する事ばかり考える政治家が多過ぎる。もっと、足元である庶民の健康管理を考え、税金と政治力を割いて欲しい。(み)