ペルーで共和国議会とマルティン・ヴィスカラ大統領との権力争いが泥沼化し、大統領が議会閉鎖を命じたのに対抗して議会側が暫定大統領を立て、大統領が2人という混乱した状態が生じている。1日付ブラジル国内紙、サイトなどが報じている。
9月30日、ヴィスカラ大統領は同国の憲法134条の「議会が憲法を操ろうとした」ということを理由に、議会閉鎖と選挙の前倒しを命じた。
その直接の理由は、9月30日に議会で行われる予定だった、7月で任期の切れる最高裁判事6人の後継選びだった。同日の審議では、7人の最高裁判事中、6人を指名することになっていた。
だが、ここで懸念材料が存在した。それは、議会内多数派の右翼ポピュリスト政党・人民勢力党(FP)が同党に近い人物を後継判事にすることで、同党にふりかかっていたブラジルの建設大手オデブレヒト社からの収賄をめぐる捜査を逃れるよう画策するのではないか、ということだった。
大統領側は最高裁判事選出の改正案を9月27日に提出し、同29日には、この提案をのまなければ議会を閉鎖すると宣言した。だが、FPを中心とする議会多数派は、議会での政府代表にあたるサウヴァドル・デル・ソラール首相が改革案を提示する前に、FPの息のかかる人物を判事候補に指名した。野党側は9月26日にも、議会選挙を来年4月に前倒しする提案を拒否していた。
この背景には、ヴィスカラ大統領の前任者ペドロ・クチンスキー大統領の中道右派政党「変革のためのペルー国民(変革)」とFPとの権力争いがある。2016年の大統領選はクチンスキー氏とFP候補のケイコ・フジモリ氏の大接戦となり、クチンスキー氏が勝利。だが、議会ではFPが圧勝していた。
だが、18年3月、クチンスキー氏がオデブレヒトからの収賄疑惑で罷免審理にかけられ、自ら辞任。後任に副大統領で政党無所属のヴィスカル氏が昇格した。
ヴィスカル大統領とFPとの権力争いはその後も続いていたが、18年10月、今度はケイコ氏がオデブレヒトからの収賄容疑で逮捕された。その後もFPをめぐる疑惑は続いている。
今回のヴィスカル大統領の判断は国民の支持を得た。同大統領は新たな共和国議会を作るための選挙を来年1月26日に行うことを決め、ヴィセンテ・セバージョス法相を首相に任命した。
だが、議会はヴィスカル大統領による議会閉鎖を「クーデター」とし、同日中にヴィスカル大統領の職務停止を宣言し、副議長のメルセデス・アラオス氏(無所属)を暫定大統領に指名した。ペルーは大統領が2人存在する混乱に陥った。
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