【既報関連】上院が1~2日、社会保障制度改革を含む憲法改正案(PEC)の基本文書を承認した上、修正動議も大方を否決して、初回採決を終了した。定数81の60%以上というハードルを越えた政府にとっては「勝利」と呼ぶべき結果だが、3日付現地各紙は「敗北」と評した。
各紙が敗北と表現したのは、PECが上院に持ち込まれた後、憲政委員会(CCJ)での審議から本会議1回目採決までの過程で、歳出削減規模が9300億レアルから8千億レアルへと、1300億レアル縮小したからだ。
特に「アボノ・サラリアル受け取り条件の厳格化」が削られ、760億レアル分の削減規模縮小となったことは痛手だ。
連邦政府は、社会制度改革での歳出削減規模の縮小分を取り戻すべく、タスクチームを組んで対策にあたる。パウロ・ゲデス経済相は、関係各所に「上院で失われた削減規模に相当する、10億レアル単位の歳入増を生む方法を見出せ」と号令。そのための手段の一つとして、議員たちに約束していたパクト・フェデラチーボの一部見直しも辞さない構えだ。
パクト・フェデラチーボとは、連邦政府から州政府や市に対して資金が流れるような一連の政策のことだ。
議会側も黙ってはいない。1日夜に行われた、PEC基本文書の初回採決の結果は賛成56、反対19だった。2回目の投票で、賛成議員の内8人が反対すれば、改革は頓挫してしまう。
社会保障制度改革に関する政府と議会の交渉は、支出を削減したい政府と、支持基盤への恩恵は確保したい議員たちのやりとりだ。しかし、ここに来て、社会保障制度改革とは直接関係のない事案が、取引の道具に浮上した。
それは、11月初旬に予定されている、岩塩層下(プレサル)油田の鉱区開発権入札問題だ。
この入札は、「メガ入札」と評されるほど大規模なもので、落札総額は1千億レアルを超えると試算されているが、何%が国庫に入り、何%が州政府に入るかが決まっていない。
第1回上院投票の前から既に、リオ・グランデ・ド・ノルテ州選出のジェアン・パウル・プラテス上議(労働者党・PT)などは、「“社会保障制度改革はもう決まり”などと、形式的な採決にする気はない。メガ入札によって、年内に、州にどれだけ金が入るのか? 政府からの確約が必要」と、思惑を隠しさえしなかった。
ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)は、当初は10日に予定されていた上院2回目採決を1週間遅らせてでも、賛成票の確保に万全を期すつもりだ。