日本人の口に一番合うブラジル料理は何か―といえば、エビや魚をトマトで煮込んだムケッカでは。しかもカピシャーバ風(エスピリットサント州)のそれが、一番合う。バイーア風ムケッカも有名だが、くせの強いデンデ油と、好き嫌いのあるココナッツミルクが必ず入っている。
この二つが入っていないカピシャーバ風ムケッカは、くせがなく実にマイルドで、魚自身の味がより楽しめる。日本からのどんなお客さんにも安心して薦められる一品といえそうだ。
カピシャーバ風ムケッカのレストランはサンパウロ市では数軒しかないが、最も有名なのはこのバデージョだ。1990年にミナス州ベロオリゾンテに創業し、94年にサンパウロ店を開業。9月から現在の場所に移転したばかり。
経営者のレオナルド・クロジェル・コスタさん(43)に、こだわりの点を聞くと「店名にも
なっているバデーショを使うこと。普通はなかなか手に入らない魚で、市場にでたらすぐに買い占める。この魚じゃないと本当のムケッカの味が出ない。これに特別なトマトを適量いれて煮込む。このバランスが大事なんだ」と秘密の一端を教えてくれた。
バデーショは、主にセルジッペからリオまでの海岸線に生息し、ガロッパ(ハタ)と同じ種目の魚だ。漁獲量が少なく、あまり流通していないそう。ハタは日本でも高級食材として知られる。
アバデージョという似た名前の魚がいるが、「これは別物」とのこと。「今まで仕入れた中で一番の大物は51キロ。普通は25~30キロかな」という。家庭では味わえない魚だ。
一番のお薦めは、「バデージョとカマロン・ローザのムケッカ」(Muqueca de Badejo com Camarao Rosa、二人分、193レアル)だ。カマロン・ローザはクルマエビの仲間で、キューバからリオの間の大西洋海岸にしかいない赤いエビだ。高級食材で、このエキスがバデーショの旨みに深みを加える。それにご飯、魚介のエキスが利いたピロン、バナナ・ダ・テーラ(プランテン)入りの爽やかなファロッファが付いてくる。
「カマロン・ローザとロジーニャのムケッカ」(Muqueca de Camarao Rosa e Rosinha)だと二人分で129レアル。他にもラゴスタ(大型のエビ)やシリ(カニ)のムケッカもある。
5~6人のグループならムケッカの「モーダ・ダ・カーザ」(Muqueca a Moda da Casa、約580レアル)がお薦め。バデーショ、カマロン・ローザに加え、イカ、ラゴスタ、メッシェリョン(ムール貝の仲間)なども入っており、最も豪華だ。「日本人のグループが来たら、だいたいこれを注文するね」とのこと。
オードブル(前菜)を頼むなら、カスキーニャ・デ・シリー(Casquinha de Siri)だ。バイーア海岸から取り寄せたカニの肉がたくさんのっており、おつまみとしても最高。この店にはサンタカタリーナ州で養殖された生ガキも用意されており、まさに日本人向き。
大切な人と貴重なひと時を過ごすために、美味しい魚介料理を味わうなら、バデージョに足を運んでみるのもいいかも。
Restaurante Badejo São Paulo
【営業時間】 火曜日から金曜日=正午から午後3時、午後6時から午後10時半、土曜日=正午から午後11時、日曜日=正午から午後9時、月曜定休日
【電話】(11) 5055.0238
【住所】Av. Jurema, 79 – Moema, São Paulo – SP, 04079-000(メトロのモエマ駅から徒歩5分)