「次は北島三郎さんを引っ張って一緒にブラジルへ来ます」――北山たけしがそう宣言すると、観客は大歓声で応えた。6日にサンパウロ市の文協大講堂で行われた「北山たけしブラジル移民111周年記念スペシャルコンサート」(池田マリオプロダクション主催)2回公演の一場面だ。
北島三郎の弟子でNHK紅白歌合戦に5年連続出場した彼の歌声を聴くために、計2千人が来場。パラナ州やミナスジェライス州などからも公演に訪れた。
初めに師の特別ビデオメッセージが流され、「今日は義理の息子で弟子の北山たけしの歌を楽しんでください。私も、もう一度ブラジルに行きたくなりました」と微笑み、ファンを喜ばせた。
津軽三味線奏者・福居一大の演奏で開幕し、北山たけしが歌いながら登場。「大勢の皆さんにお越しいただき、ムイント・オブリガード」と挨拶し、「ブラジル、オッチモ! フェジョン、ゴストーゾ!」と覚えたてのポルトガル語で客席に語りかけると観客は大喜びした。
踊りや数々の楽器の腕前も披露。北島三郎の「風雪ながれ旅」を歌った後は、剣舞の華麗な舞いと三味線の音に合わせた尺八、大太鼓などの演奏で会場を沸かせた。
皆で歌える懐かしい曲を中心に選曲され、日系社会でも愛されている名曲「高校3年生」「上を向いて歩こう」「ふるさと」「赤とんぼ」や童謡などを観客と大合唱。客席からは「こんなに歌うのは久しぶり!」と声を弾ませる声が聞こえた。
途中、観客席を周る時間もあり、「北島三郎さんから、ブラジルの皆さんに触ってもらいなさいと言われています。女性は頬にベージョ(キス)、アブラッソ(抱擁)もOK!」という言葉に会場の熱気は最高潮に。押し寄せる観客1人1人に、笑顔でサービス満点の対応を見せた。
サンパウロ日伯援護協会の与儀昭雄会長と菊地義治前会長は、1984年に日伯友好病院建設の慈善コンサートを行った北島三郎に対し感謝プレートを用意。北山たけしに手渡すと、「僕にじゃないんですね」と観客を笑わせ、「北島三郎さんに届けます」と笑顔で受け取った。
最後は「次は北島三郎さんと一緒にブラジルに来ます!」と誓い、観客のアンコールに応えて、北島三郎の「祭り」で公演を終えた。
真っ先にCDを購入していた松田節子さん(76、二世)は、友人の高橋弘子さん(79、二世)と参加。「初めてNHKで見た時、なんて綺麗な顔だろうと思った。チケットもすぐに買ったわ」とうっとり。
印象に残ったのは、亡き母親を想って本人が作詞作曲した『灯(ともしび)~いつまでも忘れない~』。「お母さんへの気持ちが伝ってきた。他に知っている曲もいっぱいあった。今日の夕食会も行くつもり」と熱を上げ、「買うつもりなかったけどCDも『これは買わなきゃ!』って」とますますファンに。
偶然ミナス州から出聖していた四本強さん(63、二世)は「ホテルで昨日知った」と急きょ参加。北山たけしの歌をすっかり気に入り、「すごい歌声。それに優しい方で、日本人らしく腰が低くて先生を敬っているのが素晴らしい」と絶賛。「『上を向いて歩こう』は彼の声に良く合っていた。僕が好きな『北国の春』も良かった。来てる人皆がとても喜んでいたね。CDも購入したよ」と満足気に笑った。
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北山たけしのコンサートに参加していた宮田ローザさん(76、二世)と姉の宮田和子さん(85、二世)は、NHKで北山たけしが歌うのを見て以来好きだったという。「実際に聞いた方が良かったし、テレビを見て思っていたより明るくて楽しい人。冗談もたくさん言ってて、もっとファンになったわ」と声を弾ませていた。