ボルソナロ大統領は8日、大統領官邸前で自身の支持者に対し、「社会自由党(PSL)のことは忘れろ」と自身の所属政党を批判する発言を行い、党関係者の間で物議を醸した。大統領はPSL内での汚職疑惑を嫌っており、離党に動いているとの情報もある。9日付現地紙が報じている。
この発言は8日朝、大統領官邸を出てきたボルソナロ氏に、ペルナンブコ州レシフェ在住者で、PSLからの出馬を考えているという支持者が近づいたときに起こった。
大統領はその支持者に対し、取材陣が見ている目の前で、「PSLのことは忘れろ」と耳打ち。支持者が「『私とボルソナロと(ルシアーノ・)ビヴァール、共に新しいレシフェのために』との題でビデオを流す」と言うと、声に出して、「止めておけ。奴(ビヴァール党首)は火の車だ」「その火の粉が私にまで降りかかっている」とまで発言した。
この発言の背景には、ビヴァール氏の拠点であるペルナンブコ州とミナス・ジェライス州で、昨年の統一選挙で幽霊候補(ラランジャ)をたて、政党支援金を不正に受給した疑惑が浮上したことがある。ミナス州での疑惑は大統領にも及んでいるとの供述もあり、汚職撲滅を唱えて大統領に当選したボルソナロ氏には痛手となっている。
だが、この報を耳にしたPSL議員には強い不快感を示す声も少なくない。PSL下院リーダーのデレガード・バウジール下議は、「ではボルソナロ氏はきれいなのか。自分の息子にだって疑惑があるではないか」として、大統領長男フラヴィオ上議の州議時代の元職員、ファブリシオ・ケイロス氏へのラランジャ職員を介した謎の巨額振り込み疑惑を皮肉った。
また、同党の上院リーダー、マジョール・オリンピオ上議も、「聞いた瞬間、赤面した」とボルソナロ氏の発言を批判。「家を飛び出して一人暮らしをはじめるようなものだ」とも語った。同上議は、これらの発言をめぐり、大統領次男のカルロス氏とネット上で口論にもなった。
ボルソナロ氏は昨年の大統領選で公認の党選びに苦戦。出馬間際になって、やっとPSLの公認を得た経緯がある。
オリンピオ氏は「ボルソナロ氏の離党はありえない」と見ているが、エスタード紙によると、ボルソナロ氏は、現在申請中の新党・全国民主連合(UDN)への移籍に興味を示しているという。大統領はこの新党に、PSLの下議53人中最大で15人、上議3人からは2人を引き連れていく可能性があるようだ。
大統領は7日、党の主権を渡すよう、ビヴァールに電話をかけたが、否定されていた。ビヴァール氏は1994年から同党党首を務めており、大統領の三男で同党サンパウロ州支部長でもあるエドゥアルド下議が党役員の選挙を前倒しする準備をしていたことなどに対する不快感も示している。