【既報関連】8月末から北東部の海岸に漂着し始めた原油は、バイア州サルバドールの海岸やマラニョン州の自然保護区にも到達し、環境被害が拡大中と10、11日付伯字紙サイトが報じた。
10日に国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)が発表したところによると、同日現在で原油漂着が確認されたのは9州68市で、原油で汚染された海岸は150に達している。
サルバドール市ピアタン海岸に漂着した原油の塊は硬貨より少し大きい程度と小さいが、10日現在、同市だけで3海岸、州内8市では19の海岸が汚染されている。
Ibamaによると、10日には、絶滅が懸念されている水生哺乳類のマナティーが生息し、マラニョン州都のサンルイス市から157キロのクルルプ特別保護区にも原油の塊が漂着した事が確認された。現地住民によると、同保護区では4日に、小さな原油の塊が見つかっていたという。
同保護区は15の島からなり、約4千人が漁業で生計を立てている。2004年の保護区制定以来、一時は絶滅かと思われていたマナティーも再び見られるようになり、マングローブの林も9割が保護されている。住民達は、海流と原油漂着の報告があった海岸とを照らし合わせ、同保護区も被害を免れ得ない事を認識していたという。
11日現在、原油漂着が確認されている保護区は12に達している。
原油の漂着は、サンフランシスコ川の河口付近でも確認されており、飲用水の取水にも影響が及ぶ可能性が現実化しつつある。
原油漂着後も漁が行われている地域もあるが、10日現在のIbamaの発表だけで、ウミガメ12匹と海鳥1羽が死んだとされている。5日付G1サイトによると、セアラー州では同日、原油で汚れたイルカの死体も回収されている。
10日にはバイア州連邦大学も漂着したのはベネズエラ産の原油との判断を下したが、ベネズエラ政府は同日、同国石油公社PDVSAのサイトを通じ、「ブラジル海岸部の原油汚染は我が国の責任ではない」との声明を出した。
ベネズエラ産石油を載せた船がブラジル沖を航行する可能性はほとんどない事もあり、成分分析だけで同国産原油が海洋汚染をもたらしたと判断する事には、石油政策などを研究する学者や海洋学者からも疑問の声が出ている。原油流出源については今後の調査が必要だ。
リカルド・サレス環境相は8日、流出源特定のために外国の支援を仰ぐ意向を表明。海軍は8月1日~9月1日にブラジルから800キロまでの沖合いを通ったタンカー約1100隻の内、30隻対象に具体的な照会作業などを行う意向だ。
原油漂着が止まらない事で、環境への影響はもちろん、観光業や漁業といった産業活動、原油回収や焼却などに伴う経費発生など、各方面に影響や懸念が拡大している。