今年5月の皇位継承に伴い、新たに即位した天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀」が、22日午後1時(日本時間)に皇居・宮殿で行われた。儀式には、ブラジル大統領をはじめ世界各国から要人が集まり、およそ2千人が参列。12時間の時差があるブラジルでは、天皇陛下が臨まれた2つの皇室儀式を、午前1時からの生中継を夜通しテレビで観る日系人も多かった。
ノロエステ連合日伯文化協会の安永信一会長(71、三世)は、即位礼正殿の儀の生中継を最初から見た。「眠くなってしまい、最後まで見られなかった」としながらも「初めて見る儀式に深く感動した。首相の挨拶も素晴らしかった」との印象を語った。
令和への期待を聞くと「グローバル化が進み、外国との距離は近くなったが、国際的には問題が多く不安定な状況。日本は平成の時代を争いなく過ごしてきたのだから、次は世界の先頭に立って平和を実現してほしい」と言葉に力を込めた。
モジ・ダス・クルーゼス文化協会の評議員会会長を務める松本茂さん(71、三重県)もテレビの生中継を見たという。「新天皇陛下はとても国民に寄り添ってくださっているように思う。遠いブラジルから見ていても感激した」と夜中の出来事を振り返った。
「皇室は日本の象徴。良いことがあっても悪いことがあっても、我々日本人は気になる。それくらい心のよりどころになっている。新しい流れも取り入れる中で、難しい舵取りも迫られるかもしれないが、良い知らせがたくさん聞ければ」との希望を述べた。
松柏学園、大志万学院の創設者の川村真倫子さん(91、二世)はニュース番組などで即位の礼の様子を見た。1970年代に日本語研修で訪日し、3度も天皇陛下(当時は皇太子殿下)に拝謁している。「陛下にお会いしただけで心が温かくなり、安らいだ。日系の血が呼び起こされるようで、私も同行した生徒も感動して涙が出た。本当に不思議な力を持った方」とのエピソードを明かした。
「もちろん、明け方まで妻とNHKを観ていましたよ」と語ったのは、諸川有朋さん(78、二世)。生中継を途切れる事なく観続け、「前回の天皇陛下の『即位の礼』を思い出した。それから、妻と一緒に美智子妃殿下が即位された時の雑誌を引っ張り出してね」と興奮冷めやらぬ様子で語る。
08年の移民百周年の時に、天皇陛下にはサンパウロ市文協で拝謁した。「陛下から3メートルくらいの距離でお会いした。私たちに『皆さん、ご苦労されたのですね。これからも頑張ってください』と仰った。鮮明に覚えているよ」と思い出す。
陛下のお言葉には「短く、大事なことだけをビシッと述べられていた」と感心し、儀式も「一つ一つがゆっくり丁寧で厳か。他国とはやっぱり違うね」と日本独特の空気を感じ取っていた。
「国民が親しみやすい天皇陛下だと思う」と印象を語る。諸川さんが書いた著作『日本人の特質』の内容を例に出し、「天皇陛下の役割は国民のために祈ること。象徴としての役割の重大さを、十分に理解していらっしゃるのが感じられた」と熱を込めた。
パラーでも即位宣言に感動=「ぜひアマゾン川見に来て」
パラー州ベレン市在住で、パラー日系商工会議所の副会頭を務める山中正二さん(81、岩手県)は「夜9時から朝4時ごろまでずっと観ていた」。日本に居た頃から皇室には関心があり、「当時学んでいた東京農大の近くに上皇陛下が来られた時は、わざわざ見に行った」とも。
天皇陛下にお会いしたことはないが、テレビを観て「国民と寄り添っていくことを強調し、世界平和も願う姿が素晴らしい。雅子様もだが、よく世界を見ていらっしゃる」と感動した様子。天皇皇后両陛下に望むことは、「ぜひベレンにいらっしゃる機会を作ってほしい。天皇陛下は水の研究されているので、アマゾン川や大熱帯雨林を実際に見ていただきたい。日伯で協力し合い、素晴らしい世の中にしていければ」と熱を込めた。
パラー州トメアスー在住の鈴木耕治さん(79、福島県)は、「朝ニュースで観ました」と嬉しそうに語る。ちょうど天皇陛下がお言葉を述べるところで、「すごいと思った。新しい感じの天皇陛下だね」という印象を受けたという。
天皇陛下との直接の面識はないが、「僕が移住する時に、ちょうど天皇陛下は生まれたんですよ」と運命的なエピソードを披露する。59年前の2月23日、鈴木さんがメキシコ沖にいる時に陛下は生まれた。「穏やかな航海日和の日でね、祝いのご馳走がたくさん出たんだ」と笑う。
新時代となったが、「他の国にはない天皇家という存在を大事にすれば、日本人はまとまる。そのありがたさは、外にいればこそ痛切に感じる。日本ならではの歴史だからこそ、新しい時代にも守り続けてほしい」との希望を述べた。