【既報関連】8月30日に始まった北東部への原油漂着で海岸部と海洋部の汚染が拡大している中、政府の対応の遅さに痺れを切らせた非政府団体(NGO)が23日、ブラジリアの大統領府前で抗議行動を行い、逮捕者も出たと23日付現地紙サイトが報じた。
国際環境NGOグリーンピースのメンバーは、黒い服で身を固め、「原油にまみれたブラジル」「焼かれた祖国ブラジル」「環境に対抗する政府」などと書いた横断幕や電動鋸を持って大統領府前に集まり、青いシートの上に黒いペンキをまく、焼け爛れた木を模した枝を置くなどして、原油汚染やアマゾンの森林火災への対応の遅れなどを指摘した。
NGO側は、「当局や国民に政府が環境保護のための資金運営の責任をとる事の重要性を訴えるための行為」と説明。これは、今年4月の大統領令で過去の大統領令の多くを無効化した事で、2013年設置の、水中の油に関する国家緊急時計画(PNC)を担当する委員会二つが消滅、省庁間にまたがる対応が遅れている事に対する抗議行動だ。
大統領府は同件に関するコメントを避けたが、環境省は、「海岸や海洋の清掃を手伝いもせず、公共資産を損傷した」との見解を表明した。
他方、環境省は、原油漂着が確認されてから35日も経った今月4日にやっと、環境に関する緊急対策を決めるための環境の質及び廃棄物管理部門の長を任命。同部門は環境品質局に代わるもので、3月に部門長が解任された後、責任者不在となっていた。部門長が決まった時点で確認されていた原油漂着箇所は9州136海岸だったが、現在の原油漂着箇所は200を超えている。だが、今も効果的な対策は採られておらず、22日も、バイア州サルバドール市の国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)前で漁師約300人が抗議行動を行った。
原油漂着は止まるところを知らず、22日に原油が漂着したバイア州カイルー市では、同日中に1・5トンの原油を回収。ペルナンブコ州レシフェ大都市圏のジャボタン・ドス・グアララペス市では22日23時頃、バーラ・デ・ジャンガダ海岸やアモール島への原油漂着を確認。清掃局や防災局などの職員が23日未明に原油回収作業を始め、河口付近にはオイルフェンスも張られた。23日には、同州北部海岸やバイア州マラウー市でも新たな原油漂着が確認されている。
なお、農務省水産局は22日、原油漂着で活動出来なくなった漁師6万人への特例措置として、禁漁中の漁師に払われる保険金(998レアル)の払い出しを行うと発表した。詳細は経済省との協議後に発表されるが、当面の保険金の支払いは11月。その後の救済措置は今後、検討される見込みだ。フォーリャ紙によると、漁業従事者人は9州で14万4千人とされ、救済措置が必要な人はさらに増えるはずだ。