ブラジルは、ハンセン病患者数が世界で2番目に多い国です。
2003年から2018年の間に合計58万6112件、そのうち15歳未満4万4479件、また「グレード(段階)2」の障害が3万7390件報告されています。(出典はブラジル保健省SUS情報局)
世界保健機関(WHO)のハンセン病の障害度分類グレード1は「知覚麻痺はあるが、視認できる変形や損傷がない、グレード2は「視認できる変形や損傷が存在する」というもの。
WHOによるとハンセン病制圧とは、人口1万人あたり1件以下の患者数を言います。ブラジルは、まだ制圧は出来ていません。
学術誌「PLOS Neglected Tropical Diseases」によると、ブラジル西部パラー州のアルマジロの62%がハンセン病の原因菌(マイコバクテリウム・レプラ)を保有と報告されています。
アルマジロを食べる習慣とレプラ菌
レプラ菌は、アルマジロの肝臓や脾臓に多く含まれています。この地域では、住民の約62%が年に1回はアルマジロを食べています。ですが、しっかりと火を通せば問題はありません。
しかし、中にはレバー(生肉)を食べる習慣もあります。そうなると、感染する危険性が生まれます。それもあってか、この地域の最近の調査では、住民146人中92人は、らい菌に対する抗体が陽性でした。このような特殊な食生活が影響していると思われます。
実際の治療法は、菌の多菌型、少菌型によって以下のように分けられています。
多菌型の場合、治療期間は1年間で、リファンピシン、ジアミノジフェニルスルホン、クロファジミンの3剤を使用します。
少菌型の場合、治療期間は半年間で、リファンピシン、ジアフェニルスルホンの2剤使用となります。
03年から18年のながれ
2003年は、新しい症例は10万人あたり29・37人だったものが、2016年は10万人あたり12・23人(最低値)になり、2018年度は13・74人など徐々に減少しました。
15歳未満の新しい症例は、2003年は7・98人、2016年には3・63人(最低値)、2018年は3・74人と同じく徐々に減少しました。
グレード2の障害に関しても、2003年は14・5人、2017年には9・39人と減少傾向がみられます。
患者の割合は、約90%が多菌型となっています。
今後の課題
診断技術の確立のため皮膚科医との連携が必要です。それによって医療アシスタンス(援助)の質が向上し、新患者の検出率を高め、また再発患者の増加も抑えることができます。
ブラジリア連邦保健局の計画では、細菌検査、抗PGL―1ELISA法、PCR、皮膚や末梢神経の生検、四肢の筋電図検査などの設備を充実させ診断の精度を上げることになっています。
連邦区内では、新患者が途中で治療を中断することが増えており、図(1)2018年には10・1%の中断が見られました。再発率も上昇していて、(図2)将来的に薬剤耐性などを起こす可能性もあり、しっかりとした治療体制を整備することが望まれています。
なお、この見解は、個人の見解であり、所属する団体の見解ではありません。