ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)が10月30日夜、経済基本金利(Selic)を年5・5%から5%に切り下げる事を決めたと10月30、31日付現地紙、サイトが報じた。
7月以降、3会議連続で0・5%ポイントずつというSelic切り下げは、経済活動の回復の遅れやインフレが低レベルで推移するとの見通しに基づくものだ。会議後の会見では、12月の会議でさらに0・5%ポイントの切り下げが行われる可能性も示唆された。
長期にわたる景気後退期(リセッション)後の経済活動の回復が遅れている事は、中銀が独自に出している経済活動指数やインフレ予測などでも指摘されていた。また、米中の貿易戦争などで世界経済が冷え込むとの見方が広がり、世界的な景気減速が起きた事も、ブラジルの景気回復を妨げた。
だが、一方で、来年最初のCopomで4%以下に落ちる可能性は否定され始めたようだ。これは、短期間で通貨政策を変更する事を嫌い、中銀が慎重な態度をとるとの考えが強まってきた事を反映している。ただし、景気の回復が思わしくなく、インフレも抑制されている場合は3%台に落ちる可能性は残されていると見る金融機関もある。
Selicの切り下げは、様々な融資やローンの利用を促し、市場に出回る通貨の量を増し、経済活動を活性化するのに役立つが、その反面、インフレを助長する危険性をはらんでいる。
他方、Selicが低くなると、貯蓄預金(ポウパンサ)や投資ファンドの利率も下がり、インフレによる目減り分を下回る利息しかつかなくなる可能性がある。貯蓄預金の利息はSelicの7割+TR(参考金利、現在は実質ゼロ)で、10月29日に発表された動向調査フォーカスのインフレ予測の3・54%より低くなる。ファンドの場合、管理費が徴収されるケースの大半(約41%)はインフレ率以上に目減りするという。
なお、Selic切り下げに伴い、連邦貯蓄銀行(Caixa)とブラジル銀行(BB)は10月30日、不動産購入のための融資の返済金利引き下げを発表した。
Caixaの場合、11月6日以降に契約する融資の返済金利下限(年利)が、7・50%+TRから6・75%+TRに下がり、上限も、9・5%+TRが8・5%+TRに下がる。BBの場合も下限が7・4%+TRに下がる。
民間銀行大手も、不動産関連の融資の返済金利下限を、ブラデスコが7・3%、イタウが7・45%、サンタンデールが7・99%に下げる。