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《ブラジル》ミナス州マリアナの鉱滓ダム決壊から4年=賠償合意成立は4分の1=健康被害認定で戦う母も

緑が戻った土地の真ん中に残る、鉱滓に直撃されて壊れたままの家屋(Tomaz Silva/Agência Brasil)

 【既報関連】2015年11月5日に起きたミナス州マリアナ市の鉱滓ダム決壊事故から4年が経ったが、刑事的責任者は未だに断罪されておらず、賠償合意も完全には成立していない。事故で破壊された集落住民は今も仮住まいを強いられていると4、5日付現地紙サイトなどが報じた。
 サマルコ社の鉱滓ダム決壊事故は当時、ブラジル史上最大級の環境破壊事故とされた。鉱滓が直撃したマリアナ市ベント・ロドリゴの集落跡は、緑こそ増えたものの、破壊された家屋の残骸はそのままで、19人の命を奪った災害の凄まじさを伝えている。サマルコ社は資源大手のVale社とBHP・ビリントン社が共同出資した会社で、同社所有のフンダンと呼ばれるダムが決壊した。
 ダムから流出した鉱滓は、マリアナ市や60キロ下流のバーラ・ロンガ市を駆け抜け、ドセ川に到達。この川はエスピリトサント州を経て大西洋に流れ込むため、流域住民にも漁や飲用水の取水の停止など、多大な影響を及ぼした。汚泥混じりの水はドセ川の河口付近の色を変え、バイア州沖のアブロリョス国立海洋公園にも到達した。
 ダム決壊で壊滅した集落は再建工事中だが、工事は遅れ、新居に入った住民は皆無だ。
 また、連邦議会やミナス州議会の調査委員会、連邦検察庁、ミナス州検察局などの追及にも関わらず、サマルコ社やVale社などの刑事責任はまだ断罪されていない。
 当事者である企業3社などと交渉し、賠償問題などを取りまとめているレノヴァ財団によると、ダム決壊事故で被害を受けたマリアナ市住民は882世帯だが、今年の7月24日に成立した最初の賠償合意の対象は83世帯のみで、77%の世帯は未だに合意が成立していない。ミナス州検察局による数字はもっと悲惨で、マリアナ市の被害者3500人中、賠償金などを受け取ったのは151人だという。
 この事は、8月までにドセ川流域の住民なども含む被害者31万9千人に支払われた金額は、生活手段を奪われた人への月々の支援金(最低賃金一つと基礎食料品セット一つ、扶養家族がいれば1人に付き最低賃金の2割増額)が10億2千万レアルで、賠償金は8億1300万レアルという数字にも現れている。
 また、鉱滓に含まれていた重金属類による健康被害も深刻で、バーラ・ロンガ市に住むシモネ・シウヴァ氏は今も、当時13歳だったダヴィ君と生後9カ月だったソフィアちゃんが当時から抱えている健康被害が、事故によるものである事を認知してもらおうと格闘している。ソフィアちゃんは重度の呼吸器疾患で発熱や投薬が続き、皮膚にも問題が生じている。
 同様のケースは多く、連邦検察庁は賠償の対象となると見ているが、レノヴァ財団は世界保健機構の基準に沿った方法で認定作業を進めると答えるのみ。実際の認定や賠償は行われていない。