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JICA=ブラジルを4400億円も開発支援=ODA60周年記念式典=北岡理事長「多分野で成果」

ルイ・ペレイラABC長官から記念品を受け取る北岡理事長(左)、山田大使(右)

 ブラジルに対する日本の政府開発援助(ODA)が今年60周年を迎えたことを祝し、国際協力機構(JICA)は今月4日午後にサンパウロ市のジャパン・ハウスで記念式典を挙行した。日本政府は2018年までに累計4400億円を超える支援を行っており、その分野は環境、保健・医療、治安などと多岐に渡る。式典には日本から北岡伸一JICA理事長も駆けつけ、「今後も二国間の信頼の絆が周辺国を巻き込み世界を繋ぐよう努める」と力強く語った。

北岡伸一JICA理事長

 式典には、山田彰駐ブラジル日本国特命全権大使、ルイ・ペレイラ外務省国際協力庁(ABC)長官、ビートル・リッピ連邦下議、野口泰在サンパウロ日本国総領事、北岡理事長、佐藤洋史JICAブラジル事務所長が参列。キム・カタギリ連邦下議が録画ビデオで祝辞を述べた。
 北岡理事長は挨拶で、「JICAの新たなビジョンは『信頼で世界をつなぐ』。日伯の協力の歴史はまさにその言葉の通り。農業、インフラ、保健・教育などあらゆる分野で貢献し、成果を挙げている」と強調した。
 「日伯協力の中で、最も重要なのは人材育成。1908年にサントス港へ日本人移住者が初上陸して以降、日伯は100年以上共に歩んできた。両国の関係が一層深まれば」と述べ、今年から始まった日本の大学院への留学プログラムや、サンパウロ大学で開設した講座を紹介した。
 山田彰大使は、「59年に日伯経済協力が開始され、今までの協力案件の中でも、特にセラード開発(PRODECER)では、不毛の地であったセラードを世界でも有数の農業生産地に変え、ブラジルを農業大国へ押し上げた」とその功績を述べた。

佐藤洋史JICAブラジル事務所長

 佐藤所長からは、現在展開中の事業及びプロジェクトがスライドで紹介された。特に優先分野として「都市問題、環境および防災」、「投資環境の整備」、「第三国協力」が挙げられ、「SDGs(持続可能な開発目標)達成をブラジルと共に目指す」と語った。
 続いて、ペレイラABC長官から在ブラジル日本国大使館及びJICAへ60周年記念として、両国を象徴する桜とイペーが描かれた表彰状が手渡された。さらに、野村アウレリオ・サンパウロ市議からは、感謝状が授与された。
 60年間の協力を振り返り、サンパウロ州軍警察(PMESP)地域警察人権指令部長のエレナ・ドス・サントス・ヘイス大佐、サンパウロ州上水道公社のべネジット・ピント・フェヘイラ・ブラガ・ジュニオル総裁、全国工業職業訓練機関(SENAI)のフレデリコ・ラメゴ・デ・テイシェイラ・ソアレス国際関係総局長が協力成果を発表した。

協力成果を発表するサンパウロ州軍警察(PMESP)のヘイス大佐

 PMESPのヘイス大佐は、00年から治安改善のために行われたプロジェクトの成果を発表した。日本での研修や専門家の派遣を行い、交番制度の定着を目指しプロジェクトを実施した結果、殺人数は10万人あたり34・18人(00年)から6・70人(18年)に減少した。
 最後に、ユカリ・ハマダ日伯文化テクノロジー協力協会会長を含め3人が2019年JICA理事長賞を受賞し、北岡理事長から表彰状と記念品が授与された。


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 政府開発援助(ODA)60周年記念式典では、ブラジルの法曹界で活躍する二宮正人氏と日系人初の外交官・故藤田エジムンド氏に続く人材を育成するために、サンパウロ州立総合大学に「日本の近代化」について学ぶ「フジタ・ニノミヤチェア」講座が今年開設されたことが、改めて強調された。北岡伸一JICA理事長は、「1973年に東京大学で二宮氏と故藤田エジムンド氏と会い、一緒に日伯を良くしたいと思った。そういう人材が出てほしい」と講座開設の目的を説明。次世代の藤田氏、二宮氏になるのは誰か?