7日に米国ニューヨークで開かれた国連総会で、米国がとっている対キューバ制裁を解くように求める決議案が採決され、賛成187、反対3、棄権2で承認された。同決議案は1992年以降、毎年、賛成多数で承認されていたが、常に賛成してきたブラジルが、今回初めて反対に回ったと、7、8日付ブラジル各紙、サイトが報じた。
同決議案に反対したのは米国、イスラエル、ブラジルの3カ国だけだった。
この決議には強制力はなく、米国はキューバへの経済制裁を1962年から続けている。米国は、対キューバ関係が緩和したオバマ政権期の2016年に1度だけ、同決議案採決を棄権したことがあるが、現トランプ政権はキューバへの強硬姿勢を強めている。
ブラジルのボルソナロ政権は米トランプ政権にべったりで、その姿勢が今回の初の制裁解除決議案反対につながった。
ボルソナロ大統領は生動画配信で、「ブラジルは初めて、対キューバ問題で米国と歩調を合わせた。つまり経済制裁に賛成ということだ。だいたい、キューバは民主主義体制なのか? そうではない。独裁体制だ。独裁体制はそれなりに扱われるべきだ」と語った。
エルネスト・アラウージョ外相も、「ブラジルは今日の国連総会で、反キューバに票を投じた。キューバは1960年代から毎年、米国の経済制裁を非難する決議案を国連に提出しており、開発途上国は常にキューバを擁護してきたが、ブラジルは今回、真実を擁護する側に回った」とツイート。同外相はさらに、「ブラジルは一切キューバに共感しない」「ベネズエラのマドゥーロ体制は、南米大陸史上最悪の独裁体制となっているが、キューバはその後ろ盾」などと、強い言葉でキューバを非難した。
ブラジル紙は「今回の方針転換は、ブラジルの外交の基本方針の変化というよりも、現ボルソナロ政権が米トランプ政権にイデオロギーの面で擦り寄っているだけにすぎないようだ」と分析。
ボルソナロ大統領は、9月の国連総会でも「キューバのフィデル・カストロ、ベネズエラのウーゴ・チャベス、ブラジルのルーラが社会主義をラ米諸国に根付かせようとした。その根はまだ絶えておらず、根絶されねばならない」と演説している。
ロイター通信は、匿名のブラジル外交官の話として、「対キューバ制裁に反対する決議案に反対したことで、ブラジルはキューバでの経済的利益に自ら背を向けてしまった」と伝えている。