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福岡県費留学生50周年式典=各国の県人会中核人材を育成=小川知事「太い懸け橋に」

小川知事(左から2人目)らに感謝の花束を贈呈した県費留学生たち

 【福岡県発】福岡県は7日、福岡市内のホテルニューオータニ博多で『福岡県移住者子弟留学生制度50周年記念式典』を開催した。おりしも同市では「海外福岡県人会世界大会」が開催中で、小川洋県知事をはじめ、県費留学生や福岡県海外移住家族会会員、世界大会のため来日している各国県人会長や関係者ら約100人が出席し、半世紀の節目を祝福した。

会場に掲げられたブラジル各地の福岡県人会の幟

 同留学生制度の開始は1966年。正確には今年で53年目だが、世界大会と併せて50周年を盛大に祝おうと、主催した福岡県の意向で式典を3年遅らせた。
 この制度により、北米や中南米にある16カ所の福岡県人会から毎年10人前後の子弟たちを福岡県が受け入れており、これまでに445人が県内の大学や専門学校に留学した。そのうちブラジル福岡県人会の子弟が234人と全体の半数以上を占める。
 小川知事は式典挨拶で「県費留学生制度は将来の福岡県人会を担う中核的な人材を育成するもの」と意義を述べ、「ブラジルでは2012年に県費留学生OB会が設立されて横のつながりが強くなり、福岡県との交流の輪が広がった」と、その成果を報告。県費留学生に対しては「これからもそれぞれの国や地域と県との太い懸け橋となっていただきたい」と今後の活躍に期待を込めた。

記念スピーチする県費留学生OGの古川植松マルシアさん(ブラジル福岡県人会)

 式典には県費留学を経験したOBやOGたちが国内外から多数集まった。そのうちブラジル福岡県人会を代表して2人が登壇した。
 サントアンドレ市で連邦判事を務める古川植松マルシアさんは96年に県費留学生として1年間、九州大学法学部に通った。「留学中はただ単に法律分野の知識を学んだだけではなく、祖先の歴史やまち、文化などに触れたことで人間として大きく成長できた。この留学制度を経験したからこそバランスの取れた法律家になれた」と振り返った。
 90年に県費留学した福島ワルテルさんは帰伯後、県人会青年部長を務めるなど会に貢献。現在はサンパウロ市近郊で整形外科など5つの専門クリニックを経営する。

懇親会では現役の県費留学生たちがKiroroの「Best Friend」を熱唱し、会場を沸かせた

 福島さんは「留学生だったころ、祖先の墓に線香をあげたときに感動がこみ上げ、私のアイデンティティーを再発見した」と当時を懐かしみながら、自らの仕事においても「福岡大学医学部の恩師から最先端の医療技術を教わったと同時に、親切・感謝・慈悲・丁寧などの日本精神も授かった。帰国してからもこの精神は私の中に生き生きと宿っている」と胸を張った。
 式典では県費留学生たちが感謝の思いを込めて、小川知事らに花束を贈呈した。(吉永拓哉通信員)