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《ブラジル》黒人尊厳日の前日に反黒人差別の絵を下議が剥がす=「この絵こそ差別」と発言

コロネウ・タデウ下議の行為に抗議するダヴィド・ミランダ下議(中央)たち(Lula Marques)

 黒人尊厳日(黒人の意識高揚の日)の11月20日を翌日に控えた19日、ブラジリアの連邦議会下院内で展示されていた、反黒人差別アート作品をコロネル・タデウ下議(サンパウロ州選出、社会自由党・PSL)が引き剥がし、踏みつけて割ったと、20、21日付現地各紙が報じた。
 剥がされたのは、風刺画家カルロス・ラトゥス氏の作品で、警官がブラジル国旗の柄のTシャツを着、後ろ手に手錠をかけられた黒人を射殺して去っていく図柄に、「黒人ジェノサイド(集団殺害)」の文字が入っていた。
 同下議は19日午後5時59分に、「警察は殺人者などではない。警察は社会の安全を守っている。私は、2億4千万人の国民を守るために働いている60万人の警察官を誇りに思う」とツイッター(@CoronelTadeu)に投稿した。
 ツイッター投稿には、下議が「人種差別は犯罪? もちろんそうだ。この世で最も忌むべきもの。この絵はどうか、この絵こそ人種差別だ。警官は黒人だけを殺しているのか? こんなものは飾られるべきではない」と声を荒げ、絵を剥がす動画も添付されていた。
 ジャンジラ・フェガーリ下議(ブラジル共産党・PCdoB)は、「彼はすべてを剥がした。犯罪である人種差別行為を行った」と語った。ベネジダ・ダ・シウヴァ下議は「同件を下院倫理委員会にかける」とし、社会主義自由党(PSOL)も、党として倫理委員会に諮る意向を表明した。
 19日の朝から、元軍人や警官を中心とする“銃弾族議員”は、この絵に苛立ちを見せていた。カピトン・アウグスト下議(自由党・PL)も事件の前にロドリゴ・マイア議長に、絵を外すようにとの請願書を提出していた。
 ボルソナロ大統領は黒人尊厳日の朝、同件に関して問われたが、「もう私は議員ではない。議会のことはマイア議長に聞いてくれ」と語るにとどめた。また、連邦政府は黒人尊厳日に関する、いかなる公式行事も行わなかった。

 ◎教授が「サル」と呼ばれ刺される事件も

 また、サンパウロ州バウルー市では20日午後、州立パウリスタ大学(Unesp)のジャーナリズム学教授ジュアレス・シャヴィエル氏が、ナイフで襲われ、負傷する事件も発生した。同氏は暴行を受ける直前に、加害者から「サル」と罵られたことも明らかにした。
 軍警によると、教授を刺した男は酒に酔っており、教授が黒人であることをなじり、喧嘩に発展した。教授は肩と腕を刺され、着ていたシャツが血で染まったが、軽傷で済み、命に別状はなかった。刺した男は目撃者らに取り押さえられ、軍警に引き渡された。
 同教授が勤める州立大学バウルーキャンパスでは、2015年にも、トイレに「ジュアレスはサル」と落書きする事件が起きている。