樹海

知られてしまった、ふたつの「からくり」

17日のデモの失敗を伝える冗談画像(ツイッターより)

 「勢いがなくなってきているな」。ボルソナロ大統領、ならびにセルジオ・モロ法相に関してそう感じさせる事態が、ここ2週続けて起こっている。それは、11月9日と17日に行なわれた、最高裁に対しての抗議デモ。ルーラ元大統領の釈放につながった、最高裁での「2審有罪後に刑執行か否か」の審理結果に対してのものだ▼審理前は、ヴィラス・ロボス元陸軍司令官が「ルーラが釈放されるようなことがあったら、ただじゃおかない」と脅しをかけるほど、緊迫していた。だから、8日にルーラ氏が釈放された際はコラム子も、翌9日に行なわれる反最高裁デモに関して、緊張感を持って見ていた▼だが、いざ、ふたをあけて見れば、ルーラ氏が釈放されたことに対しての世の祝福ムードの方が圧倒した。デモは各地で行なわれたものの、かつてジウマ元大統領を罷免に追い詰めたときや、ボルソナロ氏が大統領選の際に刺された直後に行なわれたデモのときのような勢いは見る影もなかった▼仕切りなおしとばかりに、政治団体「ヴェム・プラ・ルア」を中心としたボルソナロ派、モロ派の人々は、今度は、「特定の最高裁判事を悪役にして攻撃を行なおう」と試み、政治家に甘いことで有名なジウマール・メンデス判事にターゲットを定めて17日にデモを行なった。ツイッター上では、「メンデス罷免」を呼びかけたハッシュタグが連日数10万個もあがったので、盛り上がるかのように見えた。だが、17日の結果は9日よりもさらに悪かった。報道を見る限り、どこの地区を見ても人はスカスカで、「本部のトラックにしか人がいない」「人通りのない大通りで中年男性がひとりでメンデス判事のイラストにさみしくトマトを投げつける」などの映像が流されるばかりだった▼こういうしらけた事態になってしまった背景には、「2つのからくり」が国民に知られてしまったことにあるのだと、コラム子はとらえている。一つは、6月から立て続いた「ヴァザ・ジャット報道」。モロ元判事とデウタン・ダラグノル検察官による、「法の手続きを遵守しない」、「論理的な飛躍も少なくない」「政治家のタイプを選り好みする」などの行為の数々がばれてしまった。公平に見たかったはずの国民でも、「これだけのことが行なわれていたのだとしたら、ルーラ氏釈放でも仕方がない」の空気がいつの間にか生まれた。これがまず大きかった▼そしてもうひとつは、最近下院で行なわれているフェイクニュースの議会調査委員会や、昨年大統領選でのフェイクニュース大量送信疑惑に関する報道だ。あれにより、世の「ボルソナロ信者」という存在が、大統領次男のカルロス氏を中心としたネット部隊によってどのように作られていたかの仕組みが世に知られてしまったからだ▼今回のメンデス判事のデモ呼びかけのキャンペーンが空騒ぎに終わったのも、「所詮、ネットが煽っているだけのもの」ということがバレてしまったからだろう。こういう「乗せられない」前例ができてしまうと、今後さすがにボルソナロ氏もモロ氏も厳しいだろう。いみじくも最近発表された世論調査では2人とも、個人の支持率は50%を割り、不支持率がかなり接近した状態にまで近づいている▼現在、ボルソナロ氏は、所属の社会自由党(PSL)を飛び出して「新党を作る」と息巻いている。ただ、それも「PSLが汚職をしたからだ」という建て前を信じている人はもはや少なく、「自分がコントロールできる党を作りたいだけ」という本音は多くの人が理解している状態。果たしてうまくいくか。(陽)

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