23日に行なわれたサッカーのリベルタドーレス杯決勝、フラメンゴ対リーヴェル・プレイト戦にはブラジル中が熱狂した。あの試合からまだ1週間も経っていないが「2010年代のブラジルで最高の試合」。そう呼んでも過言ではない気がする▼少なくとも、コラム子の経験に照らし合わせてみれば、間違いなく2010年代最高だ。コラム子がサンパウロ市に移住したのは2010年4月。それ以来、様々なサッカーの試合を見てきたが、これを上回る感動を覚えた試合はない。3度あったW杯は、ドイツ戦の悪夢が思い出される14年の国内開催をはじめ良い思い出がない。これに近い感動を覚えたと言えば、せいぜい2012年12月のクラブW杯の決勝でコリンチャンスがチェルシーを破って世界一になった時くらい。だが、今回のフラメンゴの勝利はこれとて比較にならない▼では、なぜそのように感動するのか。ひとつは、その劇的な逆転劇だ。リードされていた試合で同点に追いついたのが試合終了1分前の89分の時点であり。さらに逆転したのがロスタイム92分。負けを覚悟する時間帯からの実に鮮やかなドラマ。これがまず、なかなか見られるものではない▼人によっては「同点に追いつくまでのフラメンゴは不甲斐なかった」という人もいるが、コラム子はそうは思わない。リーヴェルはフラメンゴ用のシフトを徹底してしいていた。フラメンゴの調子が上がらないうちに中盤が崩れた隙を見て1点を先取し、ガビゴルとブルーノ・エンリケというフラメンゴが誇るダブル・エースへの徹底したマークで絶妙に封殺したあたりは敵ながらあっぱれだった。後半の途中から追加点狙いで投入した、ブラジルチームでのプレーでも有名なルーカス・プラットが淡白なミドル・シュートの空砲を連発してリズムを崩すまでは完璧だったと思う。昨年の同杯覇者というのもあるが、名勝負の相手としても不足はなかった▼もう一つ感動的だったのは、今年のフラメンゴが、歴史的に長く語られそうなくらいに魅力的なチームだったからだ。キーパーのジエゴ・アウヴェス、左右サイドバックのフィリペ・ルイスとラフィーニャは、いずれもヴァレンシア、アトレチコ・マドリッド、バイエルン・ミュンヘンといった欧州強豪レギュラー選手の出戻り組。センターバックのパブロ・マリはマンチェスター・シティ出身のスペイン人。もう片割れのロドリゴ・カイオは元五輪代表レギュラーで国内最高ディフェンダー。ボランチには、現チームで唯一の長年のレギュラーのウィリアン・アロン、もうひとりが、ジェルソン。ローマやフィオレンティーナで活躍したばかりの22歳の彼がなぜブラジルに戻ってきたか不思議だが、この若手有望株が中盤を支えた▼そして攻撃の4人には、2014年のクルゼイロ時代に国内MVPに輝いたエーデルトン・リベイロ、ウルグアイ代表の若き司令塔アラスカエタ、そして国内最高級ウィングのブルーノ・エンリケに、2年連続得点王のガビゴル。このメンバーで8月から現在まで負けなし。38年前にジーコを擁して南米、世界を制覇したときのイレヴンもいまだに伝説として愛されているが、このメンバーにはそれに負けない個性と輝きがあり、愛される理由もよくわかる▼そして、このメンバーを監督のジョルジェ・ジェズスが絶妙に操った。ポルトガル人の彼は、これまで外国人指導者に消極的だったブラジルクラブに入るや、国内指導者がやりがちな多人数の選手器用を避けてレギュラーにこだわり、常に得点を意識して前方を攻め続けるサッカーを徹底した。そうしたところは、ブラジルサッカーのスタイルに影響を与える可能性まで感じさせるほどだ。(陽)